雑記目録
高良真常



 野ばら (本)

野ばら
  長野まゆみ
   河出書房新社




水の音で、月彦は眠りから覚める。
かすかなミシンの音。中庭の夜合樹。静かな講堂。名前の思い出せない級友たち。無機質な理科教師。赤い紅い石榴と、野ばらの匂い……。
目覚めるたびにまた深く落ちる月彦の夢と現。
目的の解らない二人の少年、黒蜜糖と銀色。同じ名前の2匹の猫。
野ばらのつるに絡み取られた操り人形のように、何も見えないままに深淵に沈む夢。

「僕は野ばらの垣の外へ出たいんだ」……



長野まゆみ作品の中でも1・2を争うほどの質の高い話だと思います。心地よい悪夢のような、不思議な世界にひたれる1冊。








2004年08月20日(金)
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