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■ 野ばら (本)
野ばら 長野まゆみ 河出書房新社
水の音で、月彦は眠りから覚める。 かすかなミシンの音。中庭の夜合樹。静かな講堂。名前の思い出せない級友たち。無機質な理科教師。赤い紅い石榴と、野ばらの匂い……。 目覚めるたびにまた深く落ちる月彦の夢と現。 目的の解らない二人の少年、黒蜜糖と銀色。同じ名前の2匹の猫。 野ばらのつるに絡み取られた操り人形のように、何も見えないままに深淵に沈む夢。
「僕は野ばらの垣の外へ出たいんだ」……
長野まゆみ作品の中でも1・2を争うほどの質の高い話だと思います。心地よい悪夢のような、不思議な世界にひたれる1冊。
2004年08月20日(金)
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