カナダの北のほうにユーコン川という大河が流れています。
『ウーマンアローン』(廣川まさき/集英社 1575円)2004年、という本を妻が読みました。ユーコン川を1人でカヌーで旅した女性の旅行記です。 読み終わってから、妻は、ぼくを呼んで、近くにいておなかの赤ちゃんのことを考えてほしい、と言いました。そこでぼくは、しばらくおなかをさすっていました。 どうも、いつもと様子が違う。しばらくして妻は言いました。 「同じ年くらいの人が、ユーコンに行った。私も行きたいと思っていたのに、今は、寝てばかり」 ぼくは、以前、知り合いに連れられて、ユーコン川をカヌーでくだったことがあります。それ以来、妻は、自分も行きたいと言っていたのです。 「でも、それぞれの人生でしょう。もし、妊娠していなくても、ぜんそく持ちだったら1人で行けないでしょう」 「うん。でも、昔は元気で体力にも自信があったから、今でも冒険に対するあこがれがあるみたい」 妻は、大学生のとき、ワンダーフォーゲル部で活躍していたのです。 「ぼくと一緒だったら行けるでしょう。子どもたちが大きくなったら、きっと、2人で行こう」 そう言うと、妻は元気になりました。元気を取り戻した妻は、とっておきのレモンケーキをもりもり食べ、りんごまで食べました。 つられて食べたぼくも、すっかり食べ過ぎてしまいました。 でも、ユーコン川のことは忘れずにいようと思いました。
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