書泉シランデの日記

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『歌舞伎への招待』
2004年10月20日(水)

♪雨が降ります、雨が降る〜

台風はもううんざり。

青木が原で傘もささずにうろつくことだけは免れたが
(しかし12月に延期だと・・・)
不毛な会議におバカのじい様、やれやれ。

戸板康二『歌舞伎への招待』(岩波現代文庫)
50年以上前に書かれたものだから、言及される俳優は一人も現役ではない。
先代尽くしで、写真もよくないのだが、内容はオーソドックスでとてもいい。

一応、「花道」・・・「女方」・・・「荒事」・・・「小道具」「大道具」などと内容別に章立てになっているものの、全体としては随想風。でも、『招待』と銘打つだけあって、細かな薀蓄の披瀝ではないし、教科書的な知識の記述に終わることもない。いろいろな狂言を引き合いに出しながら、章の主題にあわせて、その芝居の見どころを語ったり、役者の芸談を紹介したり、というスタイル。思わず、「ふ〜ん、そうなんだ。今度見ることがあったら気をつけてみよう」という気になれる。

歌舞伎に限らず、古典的なものには手引きがあらまほしい。本当は「先達」がいるといいのだけれど、なかなかそうは調子よくいかないから、ガイドブックに頼るということになる。ビジュアルでもないし、知っている人の名前が出るわけでもないが、『歌舞伎への招待』は今まで見た何冊かの解説書の中でダントツにおもしろかった。当然のことながら、著者のキャリアや確かな目を感じる。渡辺保さんの書くものも悪くはないのだけれど、芝居を見ることに直結する快さは戸板さんの勝ち。



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