2014年10月23日(木) |
ものまねを脱する方法 |
リスナーやゲストからいろいろな相談をされたときの、ましゃのアドバイスがすごく好きです。
広範囲にわたってとても博学でいらっしゃるのに、ひけらかす感じがまるでないのは、
その知識をあまりにさらっと、あまりに自然に会話に挟み込んでくるからでしょうか。
あるいは、高度な知識とスキのないシモネタが、まったく同列に語られるからでしょうか。
それとも、それを語ってるお顔がオトコマエすぎて(ラジオだけど!)、
表情もかわいすぎて(ラジオだけど!)、声もステキすぎて(よしっ!)、
語っている内容のすばらしさをも、霞ませてしまうからでしょうか!
と、大げさな前置きを並べ立てるほどのご相談ではなかったんだけどね、今回は。
でも、やっぱりましゃいいわー、と思ったもので。
11日のたまラジで、
「ましゃのようなシンガーソングライターになりたくて、ましゃのカバーばかりしていたら、
いつしかましゃのものまねばかりになってしまい、自分の声を見失いかけている」
という19歳男子リスナー、アラドン君からのご相談。
「自分のオリジナリティを出すにはどうしたらいいか、歌まねは封印した方がいいのか、
失礼ながらましゃのアドバイスをお願いしたい」と。
福 「この文面から察するに、アラドンは1年前よりも、(俺に)もっと似てるってことね?
あの時点でも相当似てたよね。
(学祭でましゃ曲を歌った音源が、1年前にたまラジで紹介されたことがある)
歌の上手さとかギタープレイじゃなくて、ものまねとしての受けの良さになってきたんだろうね。
ものまねとしてのクオリティが高すぎて」
荘 「これは悩むでしょう」
福 「これはわかるね。この迷いはね。」
荘 「誰でも、自分の好きなアーティストの真似をする時期はありますよね」
福 「そうなんですよ。かつて、ビートルズのジョージ・ハリスンだったかリンゴだったか
『ぼくたちは、本当はプレスリーに憧れて、プレスリーになりたかったんだ。
でも技術的な面も含め、プレスリーにはなれなかった。だから僕たちはビートルズになったんだ』
と言ってたんです。ところがアラドンは、できすぎて・・・」
荘 「ジョージ・ハリスンから急にアラドンに・・・」
福 「ところがアラドンは、できすぎて、上手すぎるんだね」
荘 「カバーというか、『福山の物まねやってんだね』って思われるんだね」
福 「というか、『福山じゃん!』って。
そうなると、僕の曲よりも、もっと難しいコード進行の曲とか、複雑なメロディラインの
曲のカバーをやる方がいいかもしれませんね」
荘 「なるほど」
福 「たぶんね、歌的にもギター的にも、技巧派というか、上手なんですよ。
どんどん吸収していって上手になりやすい人なんですよ、きっと。」
荘 「でも、受けるほう受けるほうに、どうしても行ってしまうという・・・」
福 「それはでも大事なことですよ。それは大事。
でもそれだけじゃなくて、似せないでよりオリジナリティを高める、ということで言うと、
とっかかりとして、『できないこと』をやった方がいいんです。」
荘 「なるほど」
福 「結局、『できること』っていうのは、個性にならないんです。今、俺いいこと言ったよ!」
荘 「言いましたね!」
福 「『できること』っていうのはね、技術的に伸びないんです。もうできちゃってるから。
できないことに挑戦するから技術的に伸びるし、できないことに悪戦苦闘するから
オリジナリティが生まれてくるんです。」
荘 「ということは、どうします? 福山さんのものまねは一旦・・・」
福 「それはもう、自分の十八番なんでそれでいいんですよ。いつでもできることなんで。
さらに違うアーティストを・・・。誰? 難しいコード進行でやってる日本のアーティストって。
フラットマイナーとか、ディミニッシュとかばかりの・・・」
荘 「わたしの好きな(山下)達郎さんとか、分数コードとか使ってますけど」
福 「達郎さんも難しいけど、全然違うけどボサノバとかも難しいよ?」
荘 「ボサノバ、聴く方はゆったりした気分で聴けますけどね」
福 「世界的に有名なセルジオ・メンデスとか、かるーくやってるように見えるけど、
あのギターをコピーしようと思ったら、指つるよ!」
荘 「弾く方もラクに弾いてて、聴く方もラウンジなんかでラクに聴くようなイメージですけどね」
福 「コード進行、複雑なんですよ。ジョアン・ジルベルトとか。俺、できないもん、あれ。」
(ギターでボサノバっぽいフレーズを爪弾いてみるましゃ。ステキな音色♪)
荘 「ああ。そんな感じだ」
福 「もうね、ずーっと指見てなきゃいけないから、ボサノバ進行は俺できない。
何回練習しても、これはダメだと思って。」
荘 「普段見てるコードと確かに全然違いますね。これは真似しようにもなかなか真似できない」
福 「是非、アラドンはボサノバを」
荘 「ずっとアラドンを聞きに来てた人はびっくりすると思いますけど」
福 「なんでボッサなんだよ!?って。でも練習としてはいいと思います」
ましゃが音楽的なアドバイスをし始めると、素人にはわからないことも多いのだけど、
実際にギターを弾きながら説明してくれると本当によくわかる。ましゃのギターも聴けて嬉しいし。
このアドバイスのどこに感動ポイントがあるのだ?と言われそうですが、いやもう全部ですよ。
自分のものまねが上手すぎて、だけどそれをどうにか抜け出したい、なんて言われたら、
それだけで気分を害する大御所なんて、山ほどいらっさるでしょ?
なんか急に上から目線になったりとか。上から目線のわりに役に立たない物言いしかできないとか。
そういうところがね、誰に対しても微塵もないのよね、この方は。
ないどころか相手にとても共感し、
相手の技術の向上に実際に役立つ、とても建設的で誠実なアドバイスをなさる。
ご本人はよくご自分のことを「ちっちゃい人間」とかおっしゃいますが、
ましゃの誠実なアドバイスを聴くたびに、おおらかで気前のいい人だなー、と思います。
ちっちゃい人間は相手の成長に役立つことなんて言わないもの。
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