ことばとこたまてばこ
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皮を剥がされたタコの全身から陶器の如く真っ白な肉がぷるぷるっ。
タコに名はあった。 打史郎という名であった。
打史郎はハローワークに勤めておった。 毎日仕事にあぶれたマグロの大群が怒濤と訪れてあわわ、って忙しい日々。 何でも釣られたマグロはスイゾクカンとやら禍々しき場所にて日も暮れぬ場所で永遠に「ぐうるぐるぐる」と眠らず休まず、泳ぎ続けるだけの並々ならぬ馬鹿なので、仕事そうそう見つからぬよ。
「おめ、資格持ってるゥ?」と訊けども、マグロの馬鹿は濁った眼を見開いたまま遙か彼方に泳ぎ去ってゆく。そしてまた翌日10時29分、同じ時刻にまた群をなしてやってくるのだ。毎日毎日、履歴書も持たずにやってくる。
打史郎は忙しいよ。足が8本あるからって8人分の仕事押しつけられてたまらんよ、実際。頭は一個だけだっつんのにね。上司はそれを判ってくれない。くそがぼけ。
上司のヒラメは眼が歪な部分にあって左右対称でないことを気にしている。同僚のイカに聞いたところ顔に関するイジメが壮絶だったらしく心的外傷を抱えているそうだ。だからか実に顔の整った秋刀魚をいびることを至上の楽しみにしている。
秋刀魚はいいやつですよ。顔がいいからか変にスレることもなく性根優しき青年だ。しかし彼の場合、「易しい人」でもあり、なんとも実に底の浅い青年でもあった。そんな秋刀魚を好いたらしく思う女性もあり、そんな彼女はフグであった。
彼女はフグだ。皮に毒のある種類でセクハラもできない。以前好奇心から肩をもむセクハラを行ってみたところ、触った手が腐ってどす黒くなったので慌てて切り落としたことがある。足は数ヶ月後に生えた。それはさておき、彼女はデブだ。ファット・レディ。
もちろん秋刀魚は相手にもせず…かに思ったが一体いかなる禍事か。秋刀魚はフグとの交際を受け入れた。
今のところ打史郎の職場での唯一の楽しみは、秋刀魚とフグとの交際にいたるきっかけであった。 ある日、オホーツク海へ急ぎの郵送ハガキを送ろうと会社を1歩(8歩)出たところ、腹部あたりに激痛が走り、打史郎、ずんずんっずんずんっ海上へと引き上げられ、あわわわわ。どれほど墨を吐けれども海を汚すばかり。
そっから先。ふふ。打史郎。 皮の剥がれた打史郎の全身は、陶器の如く真っ白な肉がぷるぷるっ。ぷるぷるっ。
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