月夜に満ちる匂い。それは歌。お前は歌の匂いがする、と断言した。歌には匂いがあるのだ、と断言した。それを聞いた僕は嬉しかったんだ。ついに歌を知ることができるのだねって。幾星霜の晩が訪れて。まだ僕はここで歌を嗅ごうとたたずんでいる。ひとつ、夜の匂いだけは知った。