ことばとこたまてばこ
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よく晴れた日、数人の幼子が空を仰いで心底から楽しげに遊びまわる様を見た私は唐突に「唄いたい」という衝動に突き動かされた。
だけど私は生まれつきの音なし子。歌なんて聴くどころが知ったことすらない。 けれどもなんだろう。この灼けるような衝動。 私は今、この、たった、今、ほんとうに、唄いたいのだ。
まるで空を抱こうとするように手を極限まで力いっぱい広げて、音以外に一切が無の世界に少しでも潜り込もうと強くまぶたを閉じて、太陽の恵みを浴び、空気の恵みを浴び、風の恵みを浴び、森羅万象を浴びて、大きく息を吸い、万人が認めるような軽やかなリズムに乗り高らかに声を、どこまでも広がる声を私自身で上げたいのだ。
だけど私は生まれつきの音なし子。歌なんて聴くどころが知ったことすらない。 けれどもなんだろう。この灼けるような衝動。 私は今、この、たった、今、ほんとうに、唄いたいのだ。
冬の空はどこまでも澄みきっていて残酷なほど。 せめて、と思った私は肺を最大にふくらませたのち、瞬時息を止め、全身の酸素を絞り出すように空に向けて吐息。るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。
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