ことばとこたまてばこ
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2005年02月08日(火)

夢幻のごとく木々がざわめく緑むせかえる森の中で僕の歯が全部抜けた。
土の枯れた茶色に白のドットが散らばり映えて。
歯の無くなった口内を舌で触れると、どこもかしこも肉の感触がするのみ。
もはや何も噛めないのだ、と思うと同時に背筋を悪寒が走り抜けた。

僕は焦って病的なほどの汗を流し、そばにいた君の人差し指をしゃぶる。
ちゅうちゅう、手の味を根こそぎ吸い尽くすようにきつく吸う。
そして噛む、がしかし歯ごたえは何も伝わってこなかった。
はんなりと肉が肉をはさむだけで、君に対する暴力的な想いに任せるまま指を千切り喰らうことも出来なかった。

はむはむと甘噛み。
はむはむと繰り返す。
はむはむと甘噛み。

ふふ、くすぐったいわ。君が言った。
君はおれのこの燃えさかるような、狂おしく呻くほどの、この気持ちを知っていない。
ふふ、くすぐったいわ。君が言った。
君はおれのこの、おれのこの、おれのこの、おれのこの、愛に気づいていない。

思い知らせてやろう、とより強く噛みしめるけれども、
君はうふふふふふふとより強く笑うだけだった。
ふふ、くすぐったいわ。
そういう君の眼は絶望的に深淵たる情に濡れていた。
僕への愛じゃない。
幾分の憐憫を含んだ、僕という男への情。
僕への愛じゃない。
僕への愛じゃない。

僕への愛じゃない。

夢幻のごとく木々がざわめく緑むせかえる森の中で僕は君の指をしゃぶり君の胸に抱かれて。


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