ことばとこたまてばこ
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2006年12月10日(日) ひょうきんなけだもの 1 『歌姫の混乱』




老婆がささやく。

とてもやわらかに熟れた、
まるで腐っているほど桃色の果実が、
そろそろにはじけてしまいそうだと。

ちらばるあかぐろい果肉は、
影がすべてくらいつくす。
そのとき影が腹をこわしてはならぬのでこれを、
と老婆から正露丸をもらったね、
あのときのわたしは。

高らかに九時を告げるサイレン、
その音があまりにも高らかすぎて、
時の流れがすべてを錆びさせるに等しく、
猫とじゃれあうことすらもためらわれる。

なんだかどうしようもなく、
しずかにしなくてはならない、
しずかにしなくてはならない、
しずかにしなくてはならない、
しずかにしなくてはならない、
しずかにしなくてはならない、



しずかにしなくてはな。



まるっきり、
細かった、
あの、
にく、
ほね、
いき、

それをばわたし、
一度たりとも
殺さなかったといえるだろうか、
はたしてほんとうに。




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