ことばとこたまてばこ
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ホームカメラで あの子 あの子 あの子 あの 子 わたしの子 が 死の間際 に 撮っていた他愛のない映像 ハンディカメラで写されたその内容は 友人たちと遊園地で遊んでいるものだった あの子を襲った唐突で理不尽な 死
これがあの子の最後の映像 映像は時折友人たちの手によって まさに あの子の 姿 髪 身体 眼 手 服 口 鼻 足 靴 写されている 写されたあの子はとっても恥ずかしそうに 笑いながらなんかしゃべってる
なんか しゃべってる
なんか しゃべってる
なにを しゃべってるの
わたしはあの子の親だった そうよ わたしはたしかにあの子の親よ でも どうしてかな 全然わからないわ 音無しのわたしと音知りのあの子との隔たり おどろいた おどろいたおどろいたわ ほんとにおどろいた 手を使って話してくれないとこんなにもわからないなんて わたしは親だから あの子の口さえ見えれば どんな言葉だってたいていなら読み取れるはず と思ってたけど 音知りの友人達と会話を交わすあの子の唇は細くて早くて! 知りたくなかったわ もっと遅くてもよかったわ こんな形でわたしとあの子との会話が どれだけ奇跡的なバランスで成り立っていたんだろうと
知ってしまうなんて
わたしはどうしてもあの子の最後の姿が 写っている映像の内容が知りたかった だから音知りのわたしの妹に字幕をつけてくれるよう頼んだの わたしの妹 あの子にとってのおば あの子は妹とよく遊んでた わたしも安心して任せられたほど 残酷だとわかってはいたけれど とんでもなく冷酷なことだと知っていたけど 他の人には頼めなかったの ほんとは妹にだって嫌だった でもわたしの子の あの子の 映像に流れる音に声を わたしは聞けない 聞けない だからせめて限りなく身内にいる妹に頼んだの
3年もかかった
亡きあの子の声を聞くたびに泣いてしまうのよ! 一度我慢しきれずに妹に請求したとき激しい剣幕で怒られた
でもそんなことどうでもよかった やっとできた あの子の声が見れる 待ったわ 待ったの ほんとに待った!
3年越しでついに知りえた あの子の最後の映像に流れてる音に声たった15分
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