長年抱え続けてきて自分独りだけだと思っていた不安と恐怖がまさしく具現化されている音楽を聴き、嬉しくて幸福だと思って、感情が爆発するかと思うほどに、とめどもなく泣いている人がいた。「あの人、嬉しそうなんだけどでもやっぱり、悲しそう。音楽は気持ちいいものではなかったの?」生まれつき音を聞いたことのないちっちゃな音無し子が問うた。ちっとおっきい音無し子は少し考え、答えた。「音楽は優しげな凶器にもなるんだ」