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2005年03月24日(木) ホテルの声


軽井沢最終日、一番楽しみにしていた[旧三笠ホテル]へ。
丁寧に保存されたそのホテルは、明治・大正・昭和の空気をそのまま残す。
さすがにオフシーズンだけあって、貸しきり状態。写真撮るぞ〜ほくほく。

一歩足を踏み入れると、…さ、寒い……。
寒いというよりか、“冷たい”と言った方がぴったりだ。
「豪華ホテルってより、多少綺麗な廃墟だね」
「なんだかさっきまで誰か居たみたいな感じだよ」
なんとなく、物音をたててはいけないような感じがして、自然に会話も小声になってしまう。

キューブリック版のシャイニングで、こんなセリフがあった。
閉鎖されたホテルでの忠告のシーンだ。

『長い時間かけて、色んなことがある』
『いろんな出来事の“あと”が残るんだ』
『良い事も、…もちろん、悪い事もある』

光と影、いろんな記憶、絡み合う感情の痕跡たち。
それがこの、死臭めいた…それでいて花粉のような新緑のような臭いの正体だ。

…単にカビ臭いだけ…?





猫足のバスタブに、真っ白なタイル。
窓からは静かに光りがさしている。
髭を生やした小さな紳士たちが、会釈を交わしていたであろう廊下。
耳をすましてみても、鳥のさえずる声と木々の揺れる音だけ。

 誰か来て、なにか話そう。
 見てくれ、この廊下、このランプ、この長い階段…。
 
ホテルの声が聞こえる。
お客の来ないホテルは、夜になると淋しいだろう。






忘れないでいよう。
約束だ。



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