抱きしめられていたのは
衝動的に車を停めた場所で
車も何台も通るし
人が歩いてくるし
気持ちが落ち着いてきたら
なんだか気になってきて
また少し車を走らせた
川沿いの道
工場の裏
車を降りて
河原へ行ってみることにした
階段をのぼってみると
その下は造成中のようで
重機があるみたいだったけど
暗くてはっきりとはわからなかった
今度は階段をおりて
ぬかるんだ河原を
一緒に歩く・・・
対岸のマンションに明かりが点いていて
なぜかほっとさせてくれる
手をつないだり
肩を抱かれたりしながら
歩いて・・・
あの灯りの一つ一つに人が住んでいるのかなぁ・・・
なんて話しながら・・・
歩いている時
彼は私のどこかを
しっかり掴んでいて
ずっと離さないで・・・・
別れ話はどこかへ行ってしまった・・・
彼は私を抱きしめて
ホテルに行こっか・・・
って言った
どこの?
って答えて
でも
行かないよ
って言った
暗い暗い川面
中がどうなっているのか
全く見えない
ここは深いのかな・・・
川面に月がうつって
ゆらゆら揺れている
水は静かで
私は水の底からお月様を見ていたい
そんなこと考えてた
彼は
こんな絵画を見たことがあるなぁ・・・って
同じく水にうつったお月様を見て言った
しばらくして
堤防へ上る階段に座って
最近の出来事とか
お喋りした
メールでは面倒くさくて
今度会ったら話そうと思っていたような
私の周りの人の話とか
彼の職場の話とか
電話もあまりかけないし
ホテルで会っているときは
こんなにゆっくり話をすることがないから
ひさびさにゆっくり
くだらないことを
たくさんお喋りした
私は彼の足の間にいて
彼が後ろから私を抱きしめる形で
さっき車を運転していたときの
激しい気持ちはどこへ行ってしまったんだろう・・・
やさしいやさしい時が流れる
おだやかで
しずかで
ずっとずっとこのままでいたかった・・・
だけど
蚊がぶんぶんうるさくなってきて
車へ避難・・・
もう少し
あのまま話したかったね・・・って
言いながら・・・
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