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夕方になって、どうしても明日の朝使う物を 買い忘れていた事に気が付いた。 それ自体はどこにでも売っている物で、一番近くのスーパーで買って来ると 言って、それでも私は車で出かけた。 家人が一人残っているので、家の事は何の心配もないのだが、6時近くになって 買い物に出かける事は滅多にない。
目的のスーパーには行かず、少し遠回りをしてコンビニで買う事にする。 そこにしか売っていない 飲みたかったアイスコーヒーを一緒に購入。 家からはさして遠くないコンビニである。 次の信号を右折すれば家に戻る・・・のであるが車は直進する。 そのまま10分ほど、真っ直ぐ走らせる。 時折使う、ビデオ屋さんへ行くコースだ。だが、今日はビデオ屋には寄らない。 右折左折左折でぐるっと回って、もと来た道を帰る。
道は広く、真っ直ぐで、車通りもそれほど多くない。私はこの道が好きだ。 道の両脇の多くは古い民家で、歩道までこぼれ出た庭の花々が 目の隅を 流れ、独特の色彩を頭に残す。 陽が長くなった。そうは言っても6時半を過ぎており、夕闇が落ち始めている。 だがまだ、十分に明るい。
信号は青、青、青。確かに気持ちは良いのだが、微かな不安もよぎる。 道はずっと、遠くまで真っ直ぐに続き、遥かにぼんやりと山の影が見える。 もしもこれ以上、日が落ちず、この道が本当にこのまま真っ直ぐ続いて いるのなら、どこまで行けるか走って見ようか。 だが実際は、その間にも少しずつではあるが暗くなり始めており 道も、しばらく行くと分かれ道になっている事を 私は知っている。 信号で 左にウィンカーを出す。
「買って来ました〜」 帰りが遅い事について何か言われるかな?とも思ったが 家の中はまったりと した雰囲気に包まれている。 「先に、ご飯食べちゃったよ」 息子が駆け寄って来た。 「今日、納豆食べた、納豆!元気出るからねっお母さんも納豆食べな、納豆っ」
いや、お母さん今 そんな気分じゃ微妙にないし。あ、くさっ!納豆くさっ。 納豆くさ〜っ!
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