オリビエの日記

2005年05月22日(日)    日本のトム・ハンクスと呼ばれた剛君

    テレビで放映されたトム・ハンクス主演の映画、『グリーンマイル』を観た。
   映画館にはほとんど足を運ばない私は、少し前までトム・ハンクスを知らなかった。
   名前を知ったのは数年前。
   「日本のトム・ハンクス」
   「トム・ハンクスのような役者」
   剛君の演技を評したこんな活字を目にしたからだ。

    トム・ハンクスってどんな役者だろう。
   ときどき、心に思ったまま日は過ぎていった。
   
    「トム・ハンクス主演、感動の名作『ターミナル』」
   ある日から頻繁にながれる映画のコマーシャル。
   テレビの中で、トム・ハンクスは目から涙を溢れさせて泣いていた。
   トム・ハンクスってこんな人だったのか。
   私は初めてトム・ハンクスの顔を知った。

    『グリーンマイル』は、老人ホームで暮らしている老人の回想で始まる。
   
    六十年以上も人に話していないことが、望みもしないのによみがえる。
    私は刑務所の看守をしていた。
    死刑囚の官房で、主任として死刑の指揮をとっていた。
    死刑囚のブロックは普通最後の一マイルといわれるが、
    その官房はグリーンマイルと呼ばれていた。
    床の色がくすんだグリーンだったから。

    映画は正視できない場面がしばしばあり、辛いものがあった。
   しかし、人の心の温もりもしっかりと描かれていて、良い作品だった。

    観終わって、『僕と彼女と彼女の生きる道』の剛君が浮かんだ。
   
    夫はカフェで、家を飛び出した妻としばらくぶりに会う。
   テーブルを挟み向かい合った夫婦。
   娘をおいて家を飛び出した妻が夫に言う。
   「凛を愛していない」
   「え」
   自分を追いつめ哀しみをこらえて妻がいう。
   「凛を愛していない」
   切ない心をりょうさんが見事に演じた。
   あれほど可愛がっていた娘じゃないかと、戸惑う夫。
   家庭の中の妻に安心しきっていた夫。
   唐突と思える妻の言動を理解できなくて戸惑う夫。
   すれ違った夫婦が語り合うこの場面。
   何度リピートして観たことだろう。
   「いつこんな深い演技ができるようになったのだろう」
   剛君の演技は私の心に沁みた。
   
    剛君とりょうさんは夫婦の機微を見事に演じた。

    娘が鉄棒の逆上がりに成功したのを見て泣く場面。
   いろいろな思いが重なった、涙のあの場面。
   
    親の事情に不本意でありながらも自分に折り合いをつけて、
   土手で納得のピースサインをする幼い娘。
   娘の心情を思い、複雑な気持ちで娘をじっと見つめる父親。

    『グリーンマイル』のトム・ハンクスを観て、
   私の心に『僕と彼女と彼女の生きる道』のこんな場面が浮かんできたのだった。     


←エンピツ投票ボタン My追加
 < 過去  INDEX  未来 >
オリビエ [MAIL] [水平線の海と空]

My追加
ご感想をどうぞ。