午前中に、一本の電話が入った。 仕事で関わりのあった人が亡くなったという知らせだった。
福祉関係の仕事をするようになってから、訃報に接する機会が多くなったような気がする。 たぶん、福祉が高齢者や病気の人と密接な関係があるからだろう。
その人はまだ50代だったから、意外な感じがした。 まったく、あっけないもんだと思った。
おれは親族の葬式にも出たことがないので、訃報というものに対して免疫がなく、仕事を始めた当初、ずいぶんと苦労した。 「ご愁傷さまです」 と自然に言えるようになったのは、つい最近のことだ。
今日はKの一周忌だけど、特別何もしなかった。
今おれが住んでいるところは、Kの家がある(おれの実家もある)土地とかなり離れているから、ふらっと墓参りというわけにはいかない。
まあ、あらためてKをしのぶなんてことは、おれにとっては、する必要もないか、と自分で納得する。
日曜日にKの実家で一周忌が催され、おれも招かれたが、体調が悪いということで丁重に断りを入れた。
正直、Kの父親に対して、おれは不信感を抱いているので、会いたくないという気持ちがあった。
それに、Kの父親に招かれたKの友人Y(そいつはおれの友人でもある)にも、会いづらい気持ちがあった。
Kの父親は、「Kの生前のことをよく知る友人」と思って、Yとよく会って話をしている。Yもまたそのように振舞っている。 Kの父親は、世の親がたいていそうであるように、生前のわが子が普段どんなことを考え、どんなことをしていたか知らなかったので、その死後、急にそれが知りたくなったらしい。
おれは、KがYのことをどういうふうに見ていたか、言っていたかをよく知っているので、何だかKの父親とYとの関係があほらしく見えてしまう。
それにしても、その二人は、一周忌に来なかったおれをどう思っただろうか?
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