2005年07月09日(土) |
A darling person |
真夜中。
電話の向こうの声は痛々しく細く泣いていて わたしは 心引き裂かれる思いがする。
もう いいよね? そう貴女が言うから もう いいんだよ もう充分すぎるほど頑張ったんだから いいんだよ って わたしは それだけを繰り返す。
その言葉以外に言えないこの間に横たわる距離が もどかしく哀しく悔しい。
薬を飲んで もし眠ってしまったら 電話の音にも気づかなくなるのが怖くて 薬の切れそうになるギリギリまでとにかく飲まないでいた。
今 貴女が無事に其処へと着いたと電話をくれたから 薬 飲むよ。それでも心配性のわたし 今夜は眠れそうに無いだろうけど。
子供がさっきぐずって泣き出して 怖い夢をみたんだ って。 横に行って添い寝して抱きしめて 「怖くないよ。お母ちゃんが怖い夢を全部食べてあげるから」 って言ったら ぎゅぅうううってしがみついてそれから安心したように 寝息 また すうすう と。
ねぇ 誰かを守るにはわたしの鎧と剣はあまりにも脆く弱い。 所々錆付いて刃こぼれしてボロボロで。
それでも わたしはお姫様になれない。 わたしが 守りたいと望むから。
この弱っちいドン・キホーテは 錆付いた剣を振りかざし それでも 大切なヒトタチを守りたいんだ。 やっぱり似合うのはドレスではなくて鎧。
それを 知った。
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電話があって 声を聞いて。 少し安心した。 まだ 貴女のココロは右に左にと揺れるだろうけれど
ねぇ ゆっくりと 今は眠ろう。 身体を休めてそうして 明日のことはそれから一緒に考えよう。
此処で 子守唄を歌ってあげるから
おやすみ
ね。
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お姫様になりたかった。 けど やっぱり わたしに似合うのは剣と鎧。
それを手にとって選んだのは わたしだから。
守ろう。 闘おう。
滑稽なドン・キホーテ けど 風車にでも突っ込んでやるさ!
こんなのも まんざら悪くないかもしれない。 凛々しく(つもり)笑うから 笑い返しておくれ。
A darling person
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ゆうなぎ
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