2005年06月23日(木) |
まひるの月を追いかけて 恩田 陸 |
静と母違いの兄、研吾とその同棲相手の優香利と二人の同級生の藤島妙子。失踪した研吾を捜すために優香利と奈良へ向かったはずだったが、優香利は自殺とも思えるような交通事故死していた。優香利だと思っていた女性は妙子だった。その妙子も奈良で急死する。そして研吾は出家するという。 静は研吾と優香利は結婚すると思い込んでいたが、研吾には別に最愛の女性がいた。実母との確執をかかえる研吾の最愛の女性は静の母だった。実母にない愛を父の後妻である静の母に感じてしまったのだろうか。
それぞれの過去がちりばめられたわずか4泊の奈良への旅だった。 橿原神宮、明日香、山辺の道、奈良公園界隈・・奈良に住んでいるだけに情景が思いだされて物語にのめりこんだ。
現代人にとって、死は終焉であり、敗北であり、恐怖だ。生と死はいつも対極にあるものとしてドラマティックに、なおかつ荘厳なものとしてイメージされている。でも、実際のところは、そんなに大したものではないのかもしれない。生も、死も、そんなに差のないものなのかもしれない。奈良を歩いていると、生きている人間も、死んでいる人間も、同じ場所で暮らしているという感じがする。そして、実際に、死んだ者が今もすぐそばにいる−。
自分の考えていること、自分が感じていることは、大部分が自分の中で形にはなっていない。無意識のうちに自分を律している場合もあるし、自分を本当の意味で客観的に分析できないからである。
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