読書記録

2005年10月06日(木) 薬子の京         三枝 和子

 平城京から平安京の頃に起こった「薬子の乱」の主人公 

時代背景としては以前 読んだ「橘 三千代」 と 「山河寂寥」の中間に当たる
歴史の事実としてはほとんどが男性が主人公になっているが、私は当たり前のこととして共に生きたであろう女性の物語が好きだ
自分に繋がる者を帝位に付かせるためには、または政に参加するために帝の地位を血で血を洗うようにして奪い合う
今の時代もかなり性が氾濫しているように思うけれど、この時代はとにもかくにも女の子なら天皇の子を産むこと、そして男子なら天皇の子を産んでくれる女の縁者になること
そして政に参加すること
先の郵政民営化解散と言われた選挙のときに小泉さんが、織田信長の時代に比べたら今の状況なんて生ぬるいと言ったけれど、この古の時代もかなりの凄みがある
政権をものにしようと、天皇や皇太子を廃太子にして些細なことを理由にして表舞台から失脚させるといったいろんな陰謀謀略をめぐらせる

私は主人公の薬子よりも薬子の兄、仲成の事実上の妻であり家刀自でもある『真都』の存在が好きだ
状況判断や気配りがなかなかのものだ
そして 元服前に東大寺で出家した薬子の息子、文麿の存在もすばらしい
舞台の脇役というか、主人公を影で支えたり目立たないところでキラリと光る人間でいたい・・と強く思う


雨隠り(あまごもり)
情(こころ)いぶせみ
出(い)で見れば
春日の山は
色づきにけり
(雨に降りこめられてじっとこもっていて、心がどうにも晴れやらないので出てみると、春日山はすっかり紅葉して色づいていた) 

              大伴 家持
                平八年丙子秋九月に作れるなり)


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