読書記録

2005年10月09日(日) 桜姫           近藤 史恵

十五年前、大物歌舞伎役者の跡取りとして将来を嘱望されていた少年・市村音也が幼くして死亡した。それ以後、音也の妹・笙子は、自らの手で兄を絞め殺す生々しい夢に苦しめられるようになる。自分が兄を殺してしまったのではないだろうか―。誰にも言えない疑惑を抱えて成長した笙子の前に、かつて音也の親友だったという若手歌舞伎役者・市川銀京が現れた。音也の死の真相を探る銀京に、笙子は激しい恋心を抱くようになるが―。梨園を舞台に繰り広げられる痛切な愛憎劇。


結末に驚いた

「彼は、生まれたとき『性未分化症』 だったそうです。基本的に性未分化症の子どもも、男か女かどちらかとして届けを出します。だいたい、どちらかに身体は傾いていることが多いですから、どちらかの傾いた方へ。けれども、朔二郎さんは歌舞伎役者だ。できれば、男として届けを出したい、そう思うのも無理はないでしょう」
音也と笙子は同一人物だった。
音也くんは、死んでいて、そうして生きている。
銀京の記憶も正しかったことになる。

私は物語の構想もさることながら、それぞれの家族とうまく生きられない銀京と笙子の存在が気になった。
銀京の言葉、
「母は、自分が苦労した分、ぼくのことを支配する権利があると思いこんでいるらしい。」
「ぼくは最後まで母のことを理解できなかった。母が見せる愛情が不快だった。」

どうしてもうまく人間関係を築けない間柄がある。そしてそれが家族ということもある。



人はどのくらいかなわぬ思いを抱き続けることができるのだろうか。
どんなに思い続けても、それが無理な願いである以上、どんな人でもいつかは疲れ果ててしまうのではないだろうか。
そうして、疲れることは、許されることと似ているのではないだろうか。

私も許されたいと思う日々を生きている・・・




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