読書記録

2007年08月07日(火) 浄土の帝         安部 龍太郎


 テレビのドラマに出てくる後白河法皇はなかなか曲者のようで
あまりいい印象は持っていなかった
そんな後白河法皇が77代の天皇として即位する若き頃の物語
この 後白河法皇がいたから天皇制が続いたと言う学者もいるそうだ
保元の乱、平治の乱の頃は藤原忠通や信西にリードされがちだったけれど、その後は清盛や義経や頼朝の間をぬって巧く生きぬいた感がある

でもたいていの人間はことの初めは意欲もあり、それぞれの崇高な意思をもっていたはずだ
この物語はそんな後白河天皇だったころの話なのだ 

    

空蝉のからは木ごとにとどむれど  
  魂のゆくへを見ぬぞかなしき

思えば上皇や帝のお立場も、空蝉のようなものである。
形ばかりは祭り上げられておられるものの、政治の実権は信西や忠通に握られている。
その結果、血を分けた兄弟同士が争うという事態を招いている

「かかる世にも影も変わらず澄む月を」
帝は西行法師の歌を口ずさみ、これまで鳥羽法皇や信西から受けてきた理不尽な扱いの数々を改めて思い出された。
朝廷を操るのは常に権臣で、帝はその者に大義名分を与えるだけの飾りものにすぎない。





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