| 2008年01月13日(日) |
幾世の橋 澤田 ふじ子 |
足を痛めた父親の仕事を手伝っていた10歳の重松は仕事先で知り合った庭師の銕蔵の仕事に魅せられ庭師になろうと決意する それは武家の渡り中間をしていた重松の本当の親が借金を理由に心中して、孤児となった重松を本当の子供のように慈しんで育ててくれた今の親に楽な暮らしをさせたいと思う気持ちからだった そして同じ裏長屋に住む八十吉も流しの鋏砥ぎをしている親を見て、もっとお金を稼げる有職刀剣研ぎ師になりたいと思う
親を思いながら重松たちは健気に奉公に励むが、先輩たちのいじわるやら辛抱を重ねなければならない日々の描写が続く 重松や八十吉ばかりが成長するのではなくて、周りの分をわきまえた大人たちも少年たちのひた向きさを見て自分を変えてゆく姿もあった それを乗り越えて重松たちは一人前の職人に成長していくのだけれど、生きていくということは幾世の橋を越えていくことなのだ、と今の世の中にも充分通じることなのだと思わせている
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