日本の文化遺産のなかには素晴らしい絵巻物も多く遺されているが この本は作者が短編と静賢法院の日記とを綴りあわせ、絵と詞書のような組み合わせをこころみたと説明している。 短編には 平忠盛(清盛の父) 丹後局(後白河法皇の侍女から、法王と結ばれ娘を産んだ) 平知康(鼓の名手) 源通親(後鳥羽天皇妃承明門院在子の義父で今様光源氏といわれた) 藤原兼子〈後鳥羽天皇のお気に入りの乳母) この5人の宮中でのいわゆる世渡りの様子がおもしろい。
そして平治の乱で殺された信西の子で、後白河法皇の側近として仕えている静賢法院の日記が詞書として散りばめられている。
この5人が宮中の中にあって、 宿命のように権力への階段を登りたがるのに反対に敢えて信西の子供であるがゆえに方々の権謀術数を一歩引いた様に覚めた眼でみている静賢法院との対比が読みどころだろう。 権力をめぐる人間たちの修羅や多くの生と死がはかないけれども、そうした美醜をふくんだ生命のからみあいが今につたわる歴史なのだろう。 我々読み手の想像も加わってほんとうに歴史は面白い・・と改めて感じたことだ。
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