| 2008年04月15日(火) |
なまみこ物語 円地 文子 |
『生神子物語』
春日明神に仕えた『巫女』のうち、憑霊的能力の殊に優れていたとよ女の二人の娘、三輪のあやめ、くれは姉妹の物語。 本来 未婚の娘として神に仕えるべき身でありながら娘をもうけたとよ女は、わが身に憑った神の言葉のために夫が討ち死したこともあって、わが子を巫女にだけはしたくないと願ったがその甲斐もなく、あやしい能力は分けられた血に生きて、摂関政治の立役者藤原道長の利用することとなった。
以前読んだ『この世をば』での道長は気の弱い三男坊で、兄の道隆・道兼の死によって棚ボタ的に関白になったように書いていた。 そして 少し前に放送された『その時歴史は動いた』での道長は、争いのない世の中を作るために自分の一門が続く天皇を押していくのだった。 でもこの本での道長はなかなかのしたたか者で、自分の娘の彰子を中宮にするため一条天皇の心が定子から離れていくように贋招人としてあやめとくれはの姉妹を利用したのだ。 『栄華物語』を題材にしたこの物語は作者の想像らしいけれど、私はこの物語に書かれている道長が一番道長らしいように思うのだ。 そうでないと この世をばわが世とぞ思う望月のかけたることのなしと思えば の歌は生れないと思うから。
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