読書記録

2009年05月24日(日) 時雨の記              中里 恒子


時雨とは秋から冬にかけて、
さぁっときてさぁっと止んでいくにわか雨のこと。

読みやすい物語でほんとうにさぁっと読み終えた。

大磯の山沿い家でひとり静かな生活をおくる40代の寡婦と、会社社長をしている50代の男との密かな恋物語だ。
若い頃に一度だけ出会ったことがある女性を忘れられないでいて、20数年後を隔てて再開したときに男は矢も盾もたまらないようになって、大磯の女の家を訪ねてしまうのだ。
そして静かな大人の恋を育てながら心臓を患っていた男は急死してしまった
女から見たらほんとうに男はさぁっときてさぁっと通り過ぎていった時雨のようなものだった。

映画化もされたようだけれど、京都にある藤原定家ゆかりの時雨亭が映画を見ていない私には途轍もなく想像をかきたてる場所になった。
そういう意味でもこの物語は大人のメルヘンなのだろう。



言わぬは言うにまさる。

会わないでいると、会った瞬間に見えないものが心に映るのです。















 < 過去  INDEX  未来 >


fuu [MAIL]