読書記録

2009年09月05日(土) 埋火(うずみび)           秋本 喜久子

謙映院畿千子と堀田正睦

明治維新に繋がる幕末のドラマや映画では大久保や西郷や慶喜や篤姫や井伊直弼が数多く登場するけれど、それに先立つ日米修好通商条約では堀田正睦の存在を忘れてはいけない。
が 堀田正睦はあまりにも地味な存在として今に伝わっているように思う。

堀田正睦は佐倉11万石の当主で この物語の主人公である謙映院畿千子はその義母になる。

なかなかに気丈夫な女性でほんとうは正室として子どもを産みたかったようだけれど、あの時代は側室が世継ぎとなる子どもを出産することが多かったようだ。
畿千子はそんな状況にずいぶんと淋しい思いもしたようだけれど、正睦のことを思いながらも同士として協力していくのだ。

人は、ともすると派手な政策をする者ばかりがもてはやされるが、ぎすぎすした人間たちの間に入り込んで、忍耐強く一つの方向へまとめてゆく性格も、大変貴重な才能だと思う。正睦がまさにそのような人物であると畿千子は見抜き、幕政へ押し出すようにしてきたのである。


灰がちに埋火なりぬ鶏のこゑ

(本心を言いたい。本心を残し、のちの世の誰ぞに、この思いを伝えたい。灰がちに、灰がちに・・・、そうじゃ埋火を前に出そう。)
突然喉の奥から嗚咽が上がってきた。













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