| 2010年02月12日(金) |
落日はぬばたまに燃ゆ 黒岩 重吾 |
大阪に本社のある薬品会社のプロパーだった隅高志は五十五歳で会社を辞めて、十余年ぶりに訪れたパリで留学中の日本女性南本恵とベッドを共にした。 その恵が帰り道で車にはねられて瀕死の重体となり、意識不明の状態で日本に戻ったらしい。 異国にいても心を癒せなかった恵を、自らとダブらせて一匹狼のブローカーとして生きている秋岡らの協力を得て恵の日本での入院先を捜し始めた。 医薬品業界と医療機関との癒着や、親子の確執と断絶など今の社会が抱えている問題点をも盛りこんだ物語だったが、古代史小説も書いている作者ゆえにタイトルに引かれて読み出した私としてみたらただ読みました、という印象しかない。 でも 懐かしい場所がでてきて読みやすい物語ではあった。
ただ解説に紹介されてあった作者の言葉が心に残った。
「人間の心には人に言えない無数の小袋がある。その一つひとつを破って、その時の人間の心理を書くというのが僕のやり方なんだ。年齢を経るにしたがって、何かその袋の襞まで感じとれるようになった気がする」
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