なか杉こうの日記
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帰り電車の中から窓の外を見たら 空が淡むらさきだった。こんな言葉あるかどうかわからない。 むらさきと赤と紺と混じりあったような混沌とした色。 絵の具を混ぜたらこんな色になるかと思った。 しばし見とれていた。 昼の水色から黒に次第に変わる、そのグラジュエーションが わかるような空はあるが、今日の空は全体が その、淡むらさきだった。 筆でぐじゃぐしゃぐじゃと描き回したような。
むかしアメリカの大学にいたころ、美術室で夜遅くまで絵を書いている 少女がいた。抜群に絵のうまい人で、名をアリスと言った。金髪の長い髪。 おじょうさん、と言った感じで不思議の国のアリスのように、かわいい。 信じられないくらい、かわいかった。 美術室で夜中まで絵を描いていると言っていた。いくらその頃とはいえ、よく恐くないなあと思ったものだ。 絵の模写をしていたときだったか、彼女に誰の模写をするの、と聞いたらなんだかわからない名前をいった。「あ、そう」と言ってあとからよく考えたらレオナルド・ダ・ビンチのことだった。発音が全然違うからわからなかったのである。きっと彼女は東洋人だからダビンチのことも知らないのかも、と思ったかもしれない。 大学のキャンパスでは夜中まで小さな噴水が水を吹き上げていた。七色に光る噴水。そのそばを通って寮に帰った。
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