なか杉こうの日記
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送電線の鉄塔がある。どこにでも日本全国山の上などにそびえているのだと思う。数年前に、この鉄塔をテーマにした文庫本の小説を買った。児童文学だった。
鉄塔にはオス、メスがある。ぶらさがっている「がい子」というものの形によって著者がそう名づけたらしい。鉄塔に魅せられた少年がどこまでも鉄塔を伝って歩いてゆく、というような筋書きだったが、とても「凝る」小説で途中で止めてしまった。
その文庫本の帯に、その年の夏だったかに映画が公開予定とあった。表紙には写真も載っていた。しかしそれ以後、その映画についての噂は聞かない。全く聞かない。またその小説本もまったく目にしない。どうしたのだろう。
子供の頃、うちの近くの山の上にこの鉄塔がたっていて、子供らはよくハイキングコースになっていた細道をたどってこの鉄塔のある場所までのぼり、鉄塔の下の四角い空き地で遊んだ。いもうとがマーブルチョコを食べている写真がアルバムのどこかにあると思う。
考えてみればどうでもよい鉄塔であるが電車でどこまでも送電線が続いているのをみると、なんとなく感慨深い。子供の頃とおくまで電車に揺られていくと、丘を越え川を越えてつながっている送電線は、一体どこまでいくのだろう、と不思議に思ったものだった。
しかし、あの小説の映画化はどうしたのだろう。ときどき思い出す。
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