なか杉こうの日記
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2006年06月03日(土) |
「山の旅」大正・昭和編 |
今度読み始めたのは岩波文庫「山の旅」大正・昭和編である。以前に買って途中でやめたものだが、また最初から読み出したらそのすがすがしさに心奪われる思いである。
槇有恒著「アイガー東山稜の初登攀」。とてもうつくしい光景がいくつもある。登攀の途中、二千メートル下の村から、彼らの登攀の成功を祈って村人たちが花火を上げる。それがちいさくまっすぐな線となって昇っているところ。
四人が力を出し合いながら崖を上る。ひとりのフュレルがかついでいた6メートルの棒を落としそうになるが、はっしと抱きとめ、左腕に血を流しながらそれを支えるところ。
最後の記述はなみだが出るくらい、好きである。
「二週間ほどの後、私はグリンデルヴァルトを後にした。人々が見送ってくれて、何時までもハンケチや帽子を振っている。電車が丘の端を廻ったとき、アイガーの全容が、まざまざと聳えた。これこそ、二ヶ年の間、明け暮れ無言の友であった。思えば星降る夜半の氷に光る姿よ。さらば、永久に若きアイガー。われは定めなき道に。ただ、行く限り汝が幻を憧れ追うであろう。 そして、幸深くあれ、心厚き人々のグリンデルヴァルトよ、そは、私の第二の故郷。いつかは、また、春に帰える燕のように喜びの羽ばたき軽く飛びかえって、その温い懐に抱かれて物語ろう。」
山登りの本はめったに読まないが好きである。高校の頃、英語のリーダーにヒラリー卿のテンジンとのエベレスト登頂の話が載っていた。ヒラリー卿が書いたそのままかどうかわからないが、とても面白く好きだった。
また、大学の頃家庭教師していた高校生の英語の教科書に「ハイジ」の一節が載っていて、それはわたしが小さい頃読んだ子供向けの「アルプスの少女」よりもさらに雄大でうつくしい夕焼けの描写だった。原文(といっても英語に訳されたもの)を読もうと本を買ったが、そのままどこかにしまってしまった・・・。
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