ずいずいずっころばし
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2004年05月12日(水) 人間賛歌

人との会話の中でふとみせるその人の優しさや温かさに触れるとその日一日がほっこりとする。

それは犬の散歩で出逢う人との会話であったり、花に水やりしているときに話しかけてくる見ず知らずの人だったり、仕事のスタッフが人知れず見せる気遣いの優しさだったり、家族の何気ない言葉の中にひそむ愛情だったりする。

そんな言葉をそっと心の中で温めて転がすように味わうとき、「人間って本当に素敵だなあ」と思う。

九死に一生を得る大病をして退院してきた日。

隣の家の奥さんが車の中の私をみつけて駈けてきた。

やっと立ち上がる事が出来る程度だった私も車からでた。

奥さんは涙をいっぱい湛えた目をしばたかせて「退院出来て良かったわねえ」と抱きついた。

父も母も亡くなってしまった私は、赤の他人の隣人が涙してくれたことに胸が熱くなった。

隣近所、友人知人にも知らせていなかった入院だったのに、隣家の夫人だけは異常を聞き知って見舞いに駆けつけてくれた。

うるさいしがらみが嫌いな私だけれど、病室でそっと安堵の涙を流してくれたこの夫人の優しさだけは忘れがたい。

こころに何の邪さもなく語り合えることは私の人間賛歌に繋がる。

すべてをさらけだすのが良いとは思わないけれど、懐に飛び込んで虚心坦懐でいられる関係は素晴らしい。

一人の人間には悪も善もあるけれど、ほほえみの中に見える優しさを私は信じたい。

弱さも人間の魅力である。

はかなげに見えて万力のような強さを秘めている人もいる。

ふと見せる心のほころびに、その人の弱さや意気地なさや、もろさをみるとき、それは何の欠点でもありえない。

そっと抱きしめていつまでもそうしていたくなる。それは同情や寛容などでない。自分が抱きしめてもらいたいように、人も抱きしめたくなるものだ。

人はひとりでは生きられない。

信じあい、心より愛し合える人がいたなら、人はどこまでも強く空たかく飛べるものだ。


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