竜也くんが沖田総司を演じているので読んでみた。 長い物語であったが、中弛みもなく、最後まで飽きさせなかった。
この小説は土方歳三を主人公に持ってきている。 思った通り、新選組を魅力的に描くためには土方を主人公にした方が面白い。 土方という破天荒な一人の隊士の魅力がそのまま新鮮組の魅力になっていると思うからだ。 反対にこの小説の中の近藤勇は、祭り上げられた裸の王様という感さえある(←少し言い過ぎかもしれないが)。 私は女だが、この中で描かれている土方の生き方は理想だ。 世間からは冷遇され、汚名を着せられるかもしれないが、自分の信念を臨終まで貫く人生はやはり素晴らしい。
沖田総司の話。 実はこの「燃えよ剣」を読む前に、「沖田総司〜六月は真紅の薔薇〜」という小説も読んだ。 後者は沖田を主人公にしているので、どうしても物語が浅くなってしまう。 やはり沖田も新選組あっての人物であるので、尻切れトンボという感が否めなかった。 沖田の人物像も「燃えよ・・」で描かれている方がより沖田らしい。(これはとても主観的なことなのだが・・) 「六月は・・」の沖田は好青年過ぎた。人間としても既に完成されており、死についても悟りの境地まで達してしまっている。 私には違和感があった。 「燃えよ・・」の沖田は人間臭い。 沖田が初めて人を斬りに行くところで、その緊張の余りもよおしてしまい、土方と一緒に野○○(←汚い言葉なのではっきりとは書きません)をする場面などは、電車の中で思わず笑ってしまいそうになった。
今の私は沖田総司=藤原竜也なので、この本の中で「沖田は「うん」と可愛らしい顎で頷いた」だとか「可愛い唇でにこにこ笑っている」なんていう文を読んでしまうと、もう堪らなくなってしまうのだ(笑) 特に沖田の臨終間近の、姉みつとの場面は最高だった。不覚にも涙が出そうになってしまった。
この小説を読んでいて不思議な現象が起きた。 沖田はもちろん竜也くんの顔が脳裏に浮かび、頭のスクリーンで竜也くんが笑ったり、喋ったりしているのだが(本当に彼の声まで聞えた気がした)、土方と近藤は山本耕二さんと香取慎吾さんの顔は浮かんで来なかった。 土方の顔は、もう何年前、いや十年以上前になると思うが、近藤正臣さんが土方を演じたことがあるのだが(たぶん「白虎隊」というスペシャルドラマだったと思う)、その何十年前の若い近藤さんの顔が浮かんで来るのだ。 そして近藤勇などは、実在のあの近藤の写真の顔が離れず、その写真を頼りに自分で近藤の笑顔や怒り顔を想像し勝手に創っていた。 なんなんだろう・・これは…。
そして私は飽きもせず「新鮮組血風録」を買ってしまった…。 もう新選組関連の小説はこれで最後にしよう。きりがない。 読みたい本がまだ沢山あるのだ。それらは長らく机に積まれたままになっている。 どうも私は、新鮮組の物語を楽しむと言うよりは、文字の世界に現れる竜也くんに会いに行っているという感じがする。 こうなると竜也病もかなり重症だ…。はて、どうしたものか…。
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