先週上司のNが大阪へ出張した際の話。 客先との出張だったのだが、その中の1人U。これが実に鼻持ちならない奴なのだ。 入社して3年目で、仕事も覚え担当者として1つの仕事を任せてもらうようになった。そうなると自信が持てるようになる。これはいいことだと思う。しかし同時におごった気持ちになるのもだいたいこの頃なのだ。大抵の人間は経験のあることだ。しかしUの場合は常識の範囲を超えている。 Uの会社は私達にとっては「お客様」になるので皆下手にでる。うちだけでなく、他の関係先もしかり。 下手に出れば出るほど図に乗って高飛車に出るのだ。まあ〜生意気なことこの上ない(笑)。
さて大阪での現場。 勘違いUはいつものようにそっくり返っていたらしい。 自分の父親のような年齢の職人さんを小馬鹿にしたような態度で暴言を吐く。仕事中に携帯で私電話を掛けまくる。少し頭のいい人ならこの辺りのことはわきまえるのだが…。 そしてその日の仕事が終わり、宿泊先のホテルへ行く途中の某駅で、Uは同行している同僚の先輩社員Tさんを差し置いて自分の上司に電話で報告の連絡をした。 その中の一言。「もう馬鹿ばかりで参りましたよ。」 これにNはキレた。Nだってもう50代の後半なのだ。いくらお客とは言え、25〜6の若造に「馬鹿」呼ばわりされたら立つ瀬がない。100歩譲って、まだ「アホ」だったら許せたかもしれない…。 実はNという人間は大阪出身で、普段は非常におちゃらけているのだが、怒ると恐いっ! 大阪弁で捲くし立て、しかも声も大きいので、私達はもう慣れてしまっているが、初めて怒鳴られる関東の人間は大抵ビビる。
Nに怒鳴られたUは「ひっ」と声を漏らしたそうだ(←N談)。身を縮めて固まり…そして…なんと涙をこぼしたと言うのだ! スーツを着てネクタイを締めた男が、大阪の駅で泣いているのだ…。 Nは自分の故郷にいるため気が大きくなったのか、それでも容赦なく罵声を浴びせたそうだ。Uはそのうちしゃくりあげ状態になったらしい。 こうなると悔し泣きと言うよりは、恐くて泣いていたのだろう…(苦笑)。 人を打つ人間は実は打たれ弱いものだ。まだプーッと膨れてふてくされた方が気骨があるというものだ。 泣くとどういうことよ!? Nに怒鳴られて皆ちびらんばかりにビビッていたことは確かだが、泣いた男なんて一人もいなかったぞ。
Nは一度怒鳴ってしまえば後はさっぱりしている。いつまでもネチネチと苛めるタイプではない。これが彼の唯一の長所なのだ(笑)。 意気消沈しているUを「人生勉強したのー」とそのまま酒に誘い、その夜は随分と飲んだらしい。
そして次の日。 Uは今度はダウンしたと言うのだ!現場には出てこず、一日中ホテルにいたそうだ(笑)。 あまり酒が強くないのに、恐くて注がれるままに飲んだのであろう…。 ・・・口ほどにもない奴だった…(汗)。
それが先週の木曜と金曜の話だ。休み明けの昨日、Nは自分の武勇伝を得々と皆に話した。 「ワシがワシが」と(Nは興奮するとオレが何故かワシになる)もうヒーロー気分だ。 確かにUについては皆いい感情を抱いていなかったので、「ザマーミロー」が本音であろう。私もそう思った…。 そしてUにとって更に不幸なことに、Nは男のくせにお喋りときているのだ。 もう昨日のうちにうちの会社だけでなく、関係先殆んどにこの話をしてしまっているだろう。 言わばUは自分の恥を、一番見られてはいけない人に見られてしまったのだ。 この仕事の件でUの行く先々で皆こぞって彼を好奇の目でみることだろう。決して口には出さない。しかし眼は「知ってるよ、泣いたんだってね」と語るのだ。 こんな時はかえってその話を出してもらい、自分を笑ってもらった方がよっぽど気が楽になるのだ。沈黙の好奇の目にさらされるほど居たたまれないものはない。 弱味を握られてしまったUの生き残る道はもう笑いしかないのだ。こうなったら自分から「ボク、泣いちゃった〜、あは、あは、あは。」(いささかサムイが…)とか何とか言って、思いっきり自分を笑ってもらうしかないのだ。もしすべったら…もうその時はその時だ…。
余談…今日現在、先方の話によるとUは二日酔いはとっくに治ったらしいが、あの日以来、まだ出社していないそうなのだ…(苦笑)
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