先日愛知県の幾つかの市が合併し、その際新しいその市の名前の案となっていた「南(?)セントレア市」と言うものが住民達によって却下された。私はその市の住民でも何でもないが、「あたりまえじゃん」 これが正直な感想だった。姉妹都市となっている何処かの国の町の名前にちなんで命名されたものらしいが、よくもまぁこんな的外れの名前を付けたものだと変に感心した。会社でも町でも少数の上の人達が考えることというのは、どうも下々の人間達とかけ離れているようだ。カタカナ表記なんてものは1つ使い方を間違えると非常に滑稽なものになるのである。
さて我が町も3つの市が合併するという話が持ち上がり、随分と煮詰まったものとなっていた。しかしここでもつまづいたのは合併された後の新しい市の名前だ。3つの内のどれか1つの市の名前をそのまま使うという選択を避け、全く新しい名前が作り出された。発表された案は「武南市」というものだった。この名前を初めて耳にした時、「えーっ、やじゃぁーーっ!」と瞬間的に引いた。まぁ「セントレア」よりは強烈ではないと思うが、でもどうしても受け入れることが出来なかったのだ。じゃぁどんな名前がいいのよ?と問われても、これと言って思いつかない。よくよく考えてみると、「武南」という名前が気に入らないと言うよりは、これまで使い慣れた市の名前が消えることが嫌なのだ。恐らくそれぞれの市の人達がこれと同じような思いだったのではないかと思う。結局この合併話も新名称がネックとなり沙汰やみとなってしまった。 私はこの町では所謂よそ者である。中学2年の時にこの町に越して来た。だからもうとっくにこちらに住んでいる期間の方が長くなっているのだが、やはり子供時代を過ごした場所というのは格別な思いがある訳で…どうしてもこの町が好きになれなかった。我が家の近所はそんなよそ者が多く住んでおり、よくこの町は好きではないなどと話をしていたものだ。ところがどうしたことか、この名前に対する執着は…。たかが市の名前が変わるだけではないか。それも自分が嫌がっていた愛着も何もないはずの町の名前がちょっと変わるだけではないか。…どうも私は長い間ここに住んでいるうちに、この町に対する愛国心みたいなものが自分の中に芽生えていたようである。愛国とは不思議なもので、どんなに自国を嫌い、またその国民性を嫌っている人間でも、他国の人間が自国の悪口を言おうものなら、その嫌いなはずの自国民と一緒になってオラが国を庇うものなのである(苦笑)。これって結局時分の国に愛着がある証拠なんでないの…?
私もそろそろ素直になろう。いくらここが「日本一住みずらい県」に属していても、中途半端に都会に近いばかりにかえって垢抜けず、珍妙な風が町中に吹いていようとも、私はこの町の名前が消えることを受け入れることが出来なかったのだ。「住めば都」と言うではないか。
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