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■ はらはら と
昨日 ホテルで会ったのが4時半くらい?
今、4時か…
ドキドキしてたんだよ
昨日のこの時間。
京都駅構内で
帰りの新幹線の出発時間を待つ間
理事長が恥ずかしそうにこう 言います。
それを聞いて
私の胸は きゅぅ と締め付けられるのです。
スタバに入って
脚の長い こういう店に特有の
スツールに2人腰を下ろし
理事長はブレンドコーヒー
私はキャラメルマキアート
互いに残された時間を 惜しむように
私たちはそれぞれを 喉の奥に流し込む。
この店 よく見るけど
入ったのは初めてだ。
どうすんの?
任せていい?
京都で廻った 飲食店のすべてで
私をリードしてくれた理事長
そんな理事長が 恥ずかしそうに発したこの言葉
再び私の胸が
きゅぅ と締め付けられるのです。
58歳の男と 25歳の女の
そういう姿は 人々の目にどう映るのか
なんて あまり深く考えずに
握られた私の右手は
握った理事長の左手と共に
理事長のズボンのポケットに 仕舞われる。
こういうトキ
形とか体面に あまり、こだわらない人なんだな
というのは この京都での新たな発見。
ツインの部屋の 2人で眠るには少し狭いベッド。
絡まりあうように抱き合って眠るトキ
覆いかぶさるように
私の右乳房の膨らみに 頬をうずめて
眠りに落ちる 理事長。
こういう無防備な姿で
私に寄りかかり 眠りに落ちた男の人を
私はこれまで 知りません。
何度も何度も その白髪交じりの
緩くウェーブした髪を撫でながら
広く厚い背中と 逞しい肩を抱き
私はこれ以上のない 幸せを感じるのです。
理事長は されるのは嫌いですか?
深い愛情に 体も心も愛される
そういうシーンで
私ばかりが 愛でられることに少し
不公平感があって こういう事を口にしました。
理事長の 返す言葉を待たずに
私は自身の口内に 理事長自身を含む―
いい、いいから。
それはしなくていい。
とっさに 私の腕を取って
ぐぃ と胸まで引き上げられる。
でも…
そんな可哀想なこと させられない。
これまでの 私の経験からする
価値観みたいな 先入観みたいな
そういうものが はらはらと
剥がれ落ちる 瞬間。
年とともにね 筋力は落ちていくもんで
筋力が落ちるって言うことは
持久力も落ちるっていうことで
この時点で 理事長の言いたいことが
明確に 私の頭にイメージされます。
もっと もっともっと
可愛がってあげたいんだけど
そこは 分かってくれ。
理事長は 若い頃
あるスポーツ競技で プロ一歩手前までいった
そういう経験を持った人ですので
自身の肉体の変化に 人並み以上にとてもシビアで
そういう感覚が こういう言葉を発せさせるのでしょうけれど
私なぞが この言葉を遮るのは返って
そういう理事長に対して とても失礼な気がしたので
何も言わずに 抱きしめるその力を強め
微笑する。
それが 私の彼に対する相応しい
敬意の表し方 である気が その時はしたのです。
本当に 本当に
はらはら と
そういう音がして 剥がれ落ちた
私のこれまでの価値観や先入観や
それに起因した 固定観念みたいなものは
秋風に吹かれ 栄ゆる紅葉の落ち葉と共に
京都の町の どこかに
置き去りに されてきた
そういう 感覚です。
スタバのスツールに腰を下ろし
何も語らず じっと 駅を行き交う人々に
視線を流しながら 物思いに耽る
そういう 一人の男の横顔を見ながら
私も無言で 甘すぎるキャラメルマキアートを
すする。
今、何考えてた?(苦笑)
理事長が 何を考えてらっしゃるのかなぁ と
考えていました。(苦笑)
ははは。
案外、同じことを 考えていたんだろうと
俺は思ってるけどな。
もう一泊くらい 過ごせたらよかったな…。
再び 視線を遠くに移した理事長の
その言葉に
私は自身の心を 見透かされたようで
苦笑しながら
一口 カップに残った
最後のマキアートを すするのです。
2008年11月30日(日)
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