* たいよう暦*
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胡弓という楽器を意識したのは、高校2年生の夏だ。 真夏の京都に遊びに行った時、京極通りを歩いていると古い楽器やさんの前に「胡弓教えます」と看板が出ていた。 「わたし、胡弓ってひいてみたいなって思っててん」 友人はそういって、楽器やさんをのぞきこんだ。 その時に店先に飾られているのを見たのが、最初。 「いい音すんねんでぇ」 そう言っていた最近会うこともほとんどない彼女だけれど、あれから、胡弓はやっているのかな。
その胡弓のコンサートを聞きにいかない?と誘われて今日は、中国楽器のコンサートに行ってきた。 中国楽器・・・というと、少し前にはやった女子十二楽坊。 津軽三味線で、ロックを弾いたりする昨今だから、中国楽器で西洋音楽をやってもおかしくはないんだけれど、あの独特の響きと西洋音楽の融合が、とても新鮮だった。 でも、今日は、違う。 もっと、もっと、より「らしさ」の出たコンサート。
二胡というたった二弦だけの楽器。 その胡弓がメインで、小さな小さなホールで、10曲ほど「らしい」音楽を聞かせてくれるコンサートでした。 一番前の席に座ると、奏者の指使いや、顔の表情、息づかいまでがわかってしまうほどのホールで、最初はなんだかこちらが緊張してしまった。 でも、奏者が出てきて、弦をかまえて、一音目が響いた瞬間、あっという間に緊張はほどけた。 というか、忘れてしまった。 今まで聞いたどんな弦楽器よりも、素直な音が、ホール中を包み込む。 演奏とともに、奏者の背後に、大河が見えた。 悠々とした流れや、草のにおいや、風の音が聞こえてくるような気がした。
一瞬の間のあと、演奏を終えた奏者。 一瞬の間のあと、拍手が響いた。
みんな、一緒に同じところを、旅していたに違いない。 たった二本の弦に、ずいぶん遠くまで連れていってもらえるものだ。
その小さな楽器ひとつで、聴衆を惹き付けた奏者は、それから何度もいろんな場所へさらっていってくれた。 たった二時間。 でも、とってもいい時間でした。
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