* たいよう暦*
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社会人になって一時期、困ったことに特定のものしか食べられなくなったことがある。 あの時期は、自分にとっては短かったけれど、友人にとっては長かったようだ。 「あの時、ほんとうにサラダとプリンばっかり食べて夏を乗り切ってたよね」 と、夏にもしっかりごはんを食べるようになった私の姿を見て、何度もいう。
そうだ。 あの時は、本当に毎日毎日お昼ごはんにサラダとプリンだけを食べていた。 気が向くとスープや冷奴をつけていたけれど、あくまで主食はサラダとプリンだった。 あれはなんだったのだろう。 なにかが自分の中で、がらがらとくずれるかんじ。それに頼らなければ、なんともならない感じ。自分の中でなにかがあったのかもしれない。でも、いまだに自分のことであるのにわからない。
ところがあるとき、つきものが落ちたように、あっというまにごはんを食べるようになった。 お昼ごはんに、サラダとプリンを買いにいくことはなくなった。普通にお弁当も持っていくようになった。 あれは、秋の風が吹き始めたころ。 突然、おいしいものを食べたくなったのだ。 たきたてのごはんの、あったかい湯気。 ことこと煮込んだ煮物のうまみ。 そんなものが、恋しくなり、食べてみるとほんとうにあっという間に体にしみいった。 そして、自分に対してひどいことをしていた食生活は、なんとか終わりになった。 今は、いつでもどこでも、おいしいものを、おいしくいただけるようになった。 ちょっぴり夏ばてすると、やっぱりサラダやプリンにたよってしまうこともあるけれど、それに依存してしまうことはなくなった。 秋の風は、私においしい生活を取り戻させてくれたのだと思う・・・。
・・・というのを、今日さんまを食べながら思い出した。 さんま。秋の味。 あのまま、プリンとサラダの生活を続けなくてよかったと、この秋の味覚を味わうと本当にそう思う。 おいしい生活は、ゆたかな生活だ。
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