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お父さん


連続で、夜、買い物へ出た。
夜、大きなマスクを付け。
めっちゃ怪しいアタシ。
今日、近くのスーパーへ行ったら。
父の日が近く、園児の似顔絵が飾ってあった。
父の日、なんて。
いつからあったのだろう。
少なくともアタシが。
子ども、という時代には無かったこの日。
その似顔絵を眺めながら。
父の顔を思い浮かべた。
思い浮かべたのに。
どんな顔だったのだろう、と。
ちっとも思い浮かべられなかった。


高校1年生の、16歳の時。
アタシの父親は。
突然倒れて、三日後、死んでしまった。
ホントに突然のこと。
けれどアタシは。
ちっとも哀しくなかった。
それどころか、ざま、っとそんな気持ちで。
涙ひとつ見せずに、大変だった日々を想った。
父は、アルコール中毒者だった。


これで平穏な日々が来る、と。
その時はちっとも哀しくなかった。
けれど。
本当は哀しかったのだと、ふいに思いだした。
泣きたかったのだ、と……。
泣かなかった自分にずっと負い目を感じてきたことを。
「パパ、ありがとう」の文字の向こう。
ああ、と思いだした。
涙が溢れて。
なんて惨めな日々を送ってきたのだろうと。
涙が溢れて……。
夜、だったから。
誰にも気づかれず。
これが昼間だったら。
本当に怪しいヤツ。
半月の月を眺めながら。
涙でその影もぼやけて。
お酒のない時間には、みつばちハッチのアニメにも涙していた父を。
思いだし、思いだし。
本当は心優しいヒトだったのだ、と。
本当は、父を愛していたのだ、と。
誰にもぶつけられられない想い。
今のアタシは。
当時の父と同じ。
嫌なこと、辛いことを、お酒でだましていることを知り。
当時、父はどんなに悩んでいたかをようやく理解し。
父も。
6月生まれだったのに、その誕生日も思いだせないジブンが情けなく……。

今日。
父が死んだトシを。
ひとつうわまる誕生日。
迎えてしまった……。
ずっと憎んできたけれど。
本当は。
とっても好きだったんだよね、お父さん。

2011年06月16日(木)




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