HALF&HALF




2006年04月12日(水)  傷を持つ者



傷をたくさん作るとその分強くなる。
痛みをたくさん知っているから人の痛みも分かる。
優しくなれるし傷つけないように接する術を覚える。

でも・・・

痛いことを知っているから隠そうとする。
誰にも触れられないように心を閉ざす。
本当の自分を見せることに戸惑う。

誰かを求める心と、
誰かを拒絶する心。
二つの心はいつまでも反発しあう。


中学・高校とエスカレーター式の学校に通っていた。
長い間付き合っている友人達がいる。
その中の一人。
高校になってから出来た友人の一人と数年前に絶縁をした。
高校の頃には新宿や池袋などブラブラと遊びに行ったり、
飲んで騒いだり枕を並べて恋愛の話をしたり・・・。
楽しい思い出の中にいた友人だった。

飲み会をしている最中に、彼女が付き合っている人の話をした。
奥さんと子供がいる人。
いわゆる不倫関係をしているといった。
わたしは彼女を見つめて、一言だけ言葉を発した。
「さようなら」
お金をその場に置いて、店を出てタクシーを拾って帰った。
電話がずっと鳴っていたけれど一切とらなかった。
それっきり、彼女とは会っていない。

何人かに言われた言葉がある。
自分のものさしだけで人をはかってはいけない・・・と。
もうちょっと大人になれ・・・と。

汚らわしいと思うことに目をつむって、
それを受け入れるほど大人ではない。
平常心で彼女の言葉を受け入れることなんて出来ない。
ポーカーフェイスも出来ない、自分の心に嘘はつけない。
人にどう思われても構わない。なんとでも思えばいい。
自分の心に忠実に生きていたい。

子供の頃。
ある場面をみたことがある。
今でもそれを思い出すと吐き気がして頭が痛くなる。
一種のトラウマ。
だから、性描写の強い映画・ドラマ・本、
シモネタ・・・そして恋愛が苦手。
軽いシモネタならぜんぜん平気なんだけど、
具体的な話になると体が硬直して引きつってしまう。
平常心を保とうとするんだけど、
拒絶心の方が強くて相手のことが嫌いになってしまう。

彼女にも彼女なりの理由があったのかも知れない。
でも、理由を聞いたとしても許すことはなかったと思う。
「自分がされてイヤなことはしない」
わたしの友人なら同じだと信じていた。
自分がされたらどう思う?
自分の彼氏・旦那が他の女とって想像したらどんな気分になる?
人を傷つけることをしている人を友人だとは認めない。
そんな友達なんて必要ない。
だから切り捨てた。


去年、我が家でも父がいい歳をしてやらかした。
わたしのトラウマの原因でもある人。
悪いことはしたらいけない、
人のものを欲しがったらいけない、
善悪をちゃんと見れる人になれとさんざん言い聞かされた。
悪いことをしたら叩かれたりもして、
ヤクザなみにとても怖くて厳しい人だった。
そんな言葉を言っていた人が、
女に熱をあげて30年以上連れ添った母を捨てて、
家庭を壊して出ていった。

父は責めるわたしにこう言った。
「お母さんも好きだし、その人も本当に好きなんだ。
どっちかを選ぶことはお父さんにはできない。
お父さんはどうしたら良いと思う?」
わたしに聞くなよ!!って腹がたったりもしたけど、
その気持ちを分からないでもなかった。
わたしも好きなものがたくさんあってどれが1番なんて選べない。
でも、動物と人間の違いは理性があるかないかだと思っている。

わたしは泣きながら父に言った。
「さようなら」
もう2度とお父さんと呼ぶことはない。
誰かを傷つけてまで生きている神経が許せない。
わたしが一番許せなかったことは、
母を半年以上も騙してその女と会っていたこと。
ばれるまで黙っていて隠そうとしていたこと。
ピエロになっていた母を思うと可哀想で仕方がない。


何度もさようならと口に出すたびに悲しくなる。
本当は別れたくなんてないんだと思う。
ずっと一緒にいたいと思う人ほど、
わたしから離れていってしまう。
それが、とても悲しい。

人を許す。
文字に置き換えると短く簡単な言葉なのに、
なんて難しいのだろう・・・。

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あき☆ミ