そんなこんなして付き合ってはいたんだけど、 やがて私たちは別れることになった。
その時まだ私は未練があったから、 彼女の氷はまだ完全には溶けきってなくて、 近い日にまた仲直りする日が来るだろうと 思っていた。
でも彼女はまもなく別の彼氏をつくることができた。
私は完全にふられてしまったわけなんだけど、 彼女が完全に立ち直って 普通の女の子に戻ることができたのは、 本当に嬉しかった。
彼女は私にいろんなことを教えてくれたし、 いろんなものを私に残していった。
宮本輝の小説、 アディエマスの歌、 家計簿をつけること。
人が死ぬという恐怖、 そしていつかは忘れ去られる切なさ。 ちいさな手首に残った細い傷痕。
愛する人を失うこと。 悲しさとか寂しさとかいうことよりも、 まさに「失うこと」としか言いようのない、 喪失感。
彼女は新しい人生のステップを踏み出したけど、 私は彼女から多くものを継承し、 失恋の悲しみとは別の種類の何かが 私の中に居座っている心地がします。
まったくの偶然なんだけど、 明日「黄泉がえり」がテレビであるらしいですね。
それを今日CMで知ったとき、 心臓の鼓動が速くなるのがはっきりとわかったし、 それがまた自分を焦らせ、緊張させ、 思考を止めさせました。
明日、私は「黄泉がえり」を見るのかな。
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