私の心の中で彼女が死んで、また新しく彼女が来たような感じです。
彼女と付き合ってきていろいろ築き上げてきたもの達が崩れていって、 彼女自身は今までと変わりなく私の隣にいるんだけど、 彼女を愛し始めるところからもう一度スタートしなおさなければいけない ような感じです。
大学生のとき遠恋してた彼女をふったときと同じような感触でした。
視覚がいつもより冴えていて、自分の人生のベスト50の中に入るくらい 重要な10分なのに緊張感がなくて、静かに頭が回転してる感じ。
彼女の言葉が耳には入ってくるんだけど、それが自分にとって 何を意味するのかが理解できない、いわゆる筒抜けな感じで、 彼女の言葉は、高速で回転しだした私の思考を止めることができない。
「どこでもない場所の真ん中」にいるような感じで、 「森」の最後の場面の意味する情景が少しだけ垣間見えたような気がしました。
私の思考が進んでいくにつれて、彼女への無類の想いが 霧の中に隠れていくような感じで、やがて完全に見失ってしまって、 ついには彼女は死んでしまいました。
もうしばらくすると、彼女をかき消した思考の一部に誤りがあることに 気付いたんだけど、霧の中に消えてしまった彼女を再び探し出すことは もう不可能でした。
そのときには、私の中には彼女に対するいろんなものがなくなっていました。
一般的にいう、「冷めた」という感じです。
でも、目の前にいる彼女は、ケンカの仲直りをしようと いろんな言葉を投げかけてきました。 (そう、私たちがやってたことを彼女は「ケンカ」と呼びました)
「こっち向いて」と言われれば彼女の方を向いたし、 「笑ってよ〜」と頼まれれば自然に笑みを作ったけど、 だからといって死んでしまった彼女が戻ってくるわけではないし、 自分の心境に変化が起こるわけでもありませんでした。
テンスな感じでもなく、感情的になってるわけでもない… 単に思考の処理速度が静かにながらいつもの倍くらいに増しているだけなので、 微笑むことも、冗談を言うことも、「愛してる」と口にすることも たやすくできました。
ただ、それが自分や彼女にとって何を意味するのかまでは 考えは及ばなかったし、それは今この時点ではたいして重要な問題では ないことだと判断されたんだと思います。
そして最終的に彼女は、3年後の春に結婚しようと言いました。
わたし的にはうんともすんとも返事してないつもりだし、 何より私が愛していた彼女は既にもう失われてしまって跡形もないのだから、 返事のしようがないんだけど、 手を握り愛の言葉を吐く私を見た彼女はきっとOKしたと思うんだろうな。
3年後までにまた結婚したいくらい好きになっていればいいことだし、 目の前にいる彼女は以前と変わらない同一人物のはずなので、 きっとそれくらいさらりとできちゃうとは思うけど。
きっかけが何だったのかはよく覚えません。
自分をへこませるようなマイナスな要素は、すぐ忘れてしまいます。
彼女は私を「よわいよ〜」と言っていました。
稀に弱ってるところだけを見てそう言う気持ちもわかるけど、 実は常日頃から気丈にがんばってるから、 弱るのが「稀に」で済んでいるだけなんだよう。
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