私の雑記帳
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2013年05月27日(月) 「おのれナポレオン」粗筋1

(1)

物語はナポレオンの死から20年後から始まります。

ナポレオンの遺体が
埋葬されていた南海の孤島セント・ヘレナから掘り起こされ、
フランスに返還されたその少しあと、
ヴィクトール(実際には登場せず)という名の青年が、
今はそれぞれパリにいる、
ナポレオンがセント・ヘレナ島に幽閉されていた時に
側にいた人たちを訪ね歩くシーンから始まります。

まず訪ねたのは、
アントンマルキ先生、
シャルル・モントロン、
アルヴィーヌ・バサロの3人(の順で)。

それぞれ20年後の姿で登場しますので、
ここのモントロンはやさぐれver.であり、
アルヴィーヌは安酒場の女主人姿。

3人は「ようこそ」などで始まるそれぞれとの会話分、
その間を置きつつ順番に舞台に登場し、
舞台先端に置かれた長椅子に座っている
ヴィクトール(実際には誰もおらず)に
ナポレオンとの思い出、
在りし日の"私(にとって)のナポレオン"を
話していく。


3人は別々にヴィクトールに会っている。
ヴィクトールは先に会った人から聞いた話をもとに、
そのことやその先を訊きますから、
観ている私たちには
舞台にいる3人の言葉は掛け合いのように繋がり、
会話を聞いているかのようになる。

ここはとても演劇的なシーンだと思いました。
テレビでは一人ひとりの再現映像をつなげていくか、
3映像を重ねて処理するのかな?
ああいう同時進行にはならないと思う。


話の中、
アントンマルキ先生が、
ヴィクトールは小さい頃セントヘレナ島に住み
ナポレオンにかわいがられていたこと、
今は医者だということを、
彼の言葉を受ける形、
「そうですか。〜〜〜なんですね」で私たちに伝えていく。

そのあといきなり、
ナポレオンはヒ素により毒殺されたのではないかと
ヴィクトールが切り出す。
ヴィトールの子供の頃の思い出に残る、
ナポレオンに見られたヒ素中毒とも取れる言動についてや、
フランスに返還されるときに掘り起こされたナポレオンの遺体
の状態から考えられることを問う。
という形で、アントンマルキ先生が
ナポレオンの死の謎についての現在の考察を説明していく
(ことになる)。

つい声を荒げるアントンマルキ先生。


次にモントロンを訪ねると、
ヴィトールのことを覚えていると言う。
こんなに小さくて、陛下にかわいがられていたね、と。
モントロンはナポレオンの死のときに
そばにいたのは自分だと、
臨終の様子を自分で再現もしてた。
陛下の最後の言葉は
「部隊、下がれ」
だったと話してた。


3人目に訪ねたのはアルヴィーヌ。
陛下がいかに自分を愛してくれたか、
自分は陛下の子供を産んだのだと話す。


公演中止前、ここのモントロンとアルヴィーヌの言葉の
繋がり方が素敵でした。
別々の空間にいるはずの二人が、
お互いがいかに皇帝陛下を愛していたかを競うように
言葉を畳みかけていく。
相手をののしったり、せせら笑いながら。
複雑な関係性や気持ちを反映しつつも、
愛憎ありありで。
公演再開後は残ったセリフもありましたが
そのボリュームが減らされていたところであり、
公演中止前のそれ、本来のそれが大好きでした。


アントンマルキ先生が声を荒げたことを歳のせいにして謝り、
ナポレオンの遺体を掘り起こしてフランスに返還するとき、
当時の関係者が集まったのに、
もっとも多くの遺産をもらったモントロンは来なかったと話す。
怪しくないですか?と。


「それで俺のとこに来たのか」とヴィクトールに言うモントロン。
セントヘレナに行けなかったのは、
「お恥ずかしい話、行く金がなかったからだ」とあっさり。
今は安下宿に暮らしてる、女たちに食わせてもらってると、
「いわゆる"ジゴロ"。いけませんか?」と笑いながら。
こんな経済状態でセントヘレナに行けるわけがないと。

あなたが殺したんでしょう?と訊かれたようで、
笑いながら「そう。俺が殺した。」と言ったあと、
嘘だよと、「おれは殺しちゃいない」と否定。


アルヴィーヌも「私でもないわ」と言い、
アントンマルキ先生が「そして私でもない」。


アルヴィーヌがヴィクトールに、ハドソン・ロウを訪ねたか?と訊く。


3人退場。
ここまでが3人による冒頭の導入部。
おもしろかった!大好きです!!

このシーンでは、忘れちゃいけない、もう1つ。
この作品では、上手がモントロンサイドと言われていました。
それはそうなのですが、特に、
モントロンは登場後のこの最初の場面で、
自分が話すときもそうでしたが、
それ以上にアントンマルキ先生やアルヴィーヌが話すときは、
上手に置いてあるベッド周りにいました。
上手ステージシート側に顔を向けて。
ベッドや上手花道への階段に座って、
髪をくるくるしてたり、撫でつけてたり。
ベッドの横にしゃがみこみ、シーツを撫でたり。
ときどき、二人の言葉に
正面を見てニヤッと笑ったり、
相槌打ってたり。
しかも、あの色気ダダ漏れのやさぐれver.。
私はそこに座ったことはなかったのですが、
それはそれうもう。
だったことは、記しておこうと思います^^



そして腰の曲がった老人のハドソン・ロウがガウン姿で登場。
今からなにか破壊的なことが起こりそうな、
重々しい音楽が流れると、
ロウの回顧が始まるようになってた(と思う)。

ロウは、ナポレオンの死後イギリスに戻ったとき、
英雄を劣悪な環境で死に至らしめたと責められ、
イギリスを追われ、今はパリで暮らしているという。


セントヘレナでのことを話し始めると、
アフリカンな太鼓の音がして、
後ろ向きになったロウがガウンを脱ぐと軍服姿。
袖口を使って引きぬくようにして、
一瞬での変化を手伝うのはマルシャン。
あそこはむしろ、黒子的な役割だと思います。


ロウ総督は声色を変え、腰をぴんと伸ばし、胸を張って、
颯爽としてる。
ここからは20年前のセントヘレナ島。

舞台奥の窓の外に見える風景でも、
その時はどこにいるのかを見せていました。


まずは、ロウ総督がナポレオンに初めて会ったときの話へ。

アントンマルキ先生、モントロン、アルヴィーヌも
20年前の服でそれぞれのセリフから登場してくる。

モントロンはほつれや綻びのある、埃まるけの軍服姿。
あの青いオスカルみたいなのです。
そして、陛下の過去の輝けるあれこれを話し、
要は敬意を十分に表すように言う。
支配するやり方もあるけれど、
うまく相手に合わせて友好的にやる方法もあるだろうと言う。

実直なイギリス人はもちろん、なにをばかな!的な反応。

でも、ロウ総督はナポレオンに会うのを楽しみにしていた。
あくまでも、捕虜を支配する立場として。

フランス人3人が今でも皇帝陛下に接するように振る舞い、
ロウ総督にも同様にしてほしいと要求されて、
少しの戸惑いとともに笑いだし、断ると言う。

ナポレオンの登場が近いと、一列に並ぶ3人。
モントロンが「あなたもここへ」と言うものの「断る!」。
アントンマルキ先生に「今日だけは」と言われ、
モントロンと先生のダブル指さしで「ここへ」と促され、
しぶしぶ立つ。


プレビューの初日、ここでまず「おぉっ!」と思いました。
4人の身長がほぼ同じ。
高い壁のようになって揃うのです。

ここでようやく野田ナポレオンが登場。
テレビ(MX Tokyoでのゲネプロ映像)でも流れた
「急げ。潮が満ちる」のシーンで、
ナポレオンは一瞬で奥へ。

高い壁の前を、小さい人が小股でちょこちょこと走りぬけていく。
それだけでオモシロイ。
この視覚的効果は抜群でした。


潮干狩りに行ったようだと話した
フランス人側近3人は海岸の陛下のところへ。



一人取り残されたロウ総督は、
去り際のアルヴィーヌに肩に掛けられたガウンを
再びきちんと着て、
舞台は20年後のパリに戻る。


ヴィクトールに、ゆっくりしていけるのならいくらでも話すと言い、
次に話し始めたのは、
ナポレオンたちが住むロングウッドの屋敷周りを塀で囲み、
地元の人たちとの交流を遮断したことだと話す。

その話の途中からまた、ガウンを一瞬で、
やはりマルシャンに引き抜いてもらって脱ぐことで、
舞台は20年前のセントヘレナ島になる。


ここまでで、
4人がそれぞれにヴィクトールに何度か、
出した飲み物を「どうぞ」の言葉で進めている。
これが物語最後に大きく繋がってる。



ここでしっかりとナポレオンが登場。
家の周りを塀で囲んだことをロウ総督に猛烈抗議する。
小さい男が甲高い声でまくしたてる。

ロウ総督はナポレオンを捕虜として支配したかった。
モントロンがこのあたりのどこかで、
総督はナポレオンをとても怖れていた、と言ってました。
だからこそ、支配したかったのでしょう。

だから塀で囲んだことを抗議するナポレオンを、
徹底的にはねつける。


また、ナポレオンは「余は捕虜ではない」
自ら投降した「イギリス軍の客人である」
客人は丁重にもてなすものだと言い張る。

すると、総督から、
イギリス軍がナポレオン一人のために
どれほどのお金をかけているかを説明されて、
その金額の膨大さにナポレオンはほくそ笑む。

うふ♪って肩をすくめて笑う野田ナポレオン、
かわいいんですよねー(笑)


次にナポレオンは、
ロウ総督が「ボナパルト将軍」と呼ぶことに抗議。

ロウ総督はすでにあなたは社会的には皇帝じゃない。
捕虜なんだから呼び捨てでもいいくらいで、
あえて「ボナパルト将軍」と呼んでるんだから、
とはねつける。


何もかもを拒絶されて、
「じゃあー、余はぁー、この屋敷から出なぁい。」
で始まる子供がすねるようなことを言って、
そのくちょうはどんどん本気の口調になり、
バン!とドアを閉めて家に入って行く。



翌朝なのか数日後なのか。
モントロンがロウ総督の元へ。
ボナパルト将軍はどうしているか?と訊くと、
散歩中だと言う。
「部屋からは出なぁーい」と言っていたのは
何だったのだ?と問う総督。
モントロンは「ああいうお方ですので」と、
だからどーした?的なあしらい方で答える。
あなたも大変ですなぁとモントロンに同情する総督。


モントロンは、ナポレオン宛の手紙がすべて開封され、
検閲されていることに抗議する。

モ「抗議の手紙を書かなければなりませんね」
ロ「どうぞ、どうぞ。」
モ「その手紙も検閲されるわけですね」
ロ「もちろん」
モ「では、無駄なことはやめておきましょう」

そんな会話があり、
「物分かりのいいフランス人もいるんだね」と言われる。


次に、イギリス政府から支給される予算では、
自分たちは暮らしていけないと訴える。

ロウ総督は毎週のパーティをやめたらどうだ?と言うだけ。
「私たちには欠くべからざる習慣なのです」と
遠慮がちに言ってみたけれど、歩み寄ってくれるはずもなく。

「物分かりのいいフランス人はこのあたりで。失礼!!」と言って
モントロンが去りかけると、
総督がベルサイユ宮殿から持ってきたものを
島の人たちに売ってはいかがか?
価値がわからないだろうから二束三文にしかならないだろうけど、
食費の足しにはなるんじゃないの?と提案。

モントロンが去ったあと、
彼らは実際にいろんなものを売ったのだと、
ロウ総督が話す。
そんなみじめなナポレオンが見たかったのだと、
高笑いで去っていく。



アルヴィーヌが語る皇帝陛下の一日は
ここであってますか?

「お目覚めは6時。でもすぐにはお起きにならず・・・」

「しばらくするとマルシャンを呼びます」

「食事は・・・よく見るとあまり噛んではいらっしゃらなかったようです。
戦地での生活が長かったので、・・・・・」

「そして食事の後は肉体訓練!」

というアレです。

午後の肉体訓練のところでは、
アルヴィーヌお二人はそれぞれの形で、
訓練を強化しておられました(笑)



続いて、同じくナポレオンの一日の
政治的な側面、とはいっても、
もはやナポレオンの空想の世界に過ぎないのだけれど、
それをモントロンが説明。
空想の内閣人事を発表したりするシーンが続く。

モントロンは警察大臣。



そのあとはアルヴィーヌがトルコ風のガウンを持って登場しての、
陛下が見たいと言った、モリエールの「町人貴族」でしょうか?
(あくまでも質問でございます。笑)

ママムーシというのはトルコの兵士のことだそう。
(別項、引用のところで少し書く予定です)

モントロンとアルヴィーヌが演じるそれ。
二人は素人くさく演じてみせ、
「ドキドキさせないで。もういいよ」(要旨)と言われる。
だいたい、なんで途中からなんだ?と訊かれ、
それは「陛下が面白いところだけでいい、とおっしゃったからです」
とモントロン。
「どうせモリエールには大した筋などないから」と言われたからだと話す。
「言ったね〜」と陛下。

ここの「どうせモリエール〜」の言葉の
野田ナポレオンと山本モントロンのユニゾンは、
揃うほどにわくわくしました。

いっときちょっとずれたりもしてたんですけど、
最後の方の公演では丁寧にきちんと合わせていたように
聞こえました。


陛下にマッサージしてくれと言われるアルヴィーヌ。
ピアノを弾いてとも言われ、
もう弾ける曲がない。何か弾いて。のやりとりの中で、
ナポレオンはベートーベンを嫌いで曲を聞いたことがないことが
話されていく。

マッサージとピアノの両方をやってと言われて、
アルヴィーヌがすごく困る様子をコミカルに見せていくところ
でもありました。

モントロンは椅子に座って、
ベット際のアルヴィーヌとピアノの両方を左右に見たあと、
「たいぶあるなぁ」と言って眺めてるだけ。


ピアノの前にいるアルヴィーヌに近づく陛下。
モントロンに去るように言い、
モントロンは「パリの社交界で数々の浮名を流した妻」と
「女性には全方位的な愛を示す陛下」との当然の成り行きを
話してから去っていく。
最後に、
「アルヴィーヌに陛下の愛人になれと言ったのは、この俺なのだから」
と言い添えて。

ここの最後のモントロンの声は、
自嘲の笑いが混じりつつ、ドスが効いてましたね。


ピアノを弾くアルヴィーヌを抱きしめる陛下。
パリに戻ったら妃にするからというのに、
バカなことをと言い返す。
陛下と陛下の最初の妻ジョセフィーヌに嫉妬するアルヴィーヌとの
言わば痴話げんかはここ。



次のシーンは多分、陛下とロウ総督のチェスの対戦を
中心としたところ。

対戦の前に、
陛下が「アントンマ〜ルキ♪」(軽やかにかわいらしく)と言い、
チェスと実際の戦いの違いがわかる?と訊いてるシーンが
ありました・・・よね?
「(それは)天候だよ〜^^」と言い、
陛下が沖縄風イントネーションで説明してたのはここです、よね?


陛下と総督の対戦を思いつき、仕掛けたのはアントンマルキ先生。
ナポレオンがチェスの名手で、
側近には勝てる者がいない。
同じくチェス好きのロウ総督に、対戦しては?と持ちかける。

下手花道から「チェスの歴史」(洋書)を読みながら
出てきた総督は、名前が聞こえて、
LA-1のお客さんに「ちょっと持ってて」とその本を預けて
舞台に上がられてました、毎回。
本の名前は、その席に座った友が教えてくれました。
(ありがとうございました!)

あくまでも皇帝陛下と呼んでほしいナポレオンと
そうしたくないロウ総督。
陛下が勝てばロウ総督は「皇帝陛下」と呼び、
総督が勝てば陛下はその呼び名を諦める、ことにした。

新聞や雑誌などに載ったチェスのシーンはここです。




とっととさっさと(笑)次の手を打つせっかちな陛下に対して、
総督は熟考型。
なかなか次の手を打たない。

その間、陛下はモントロンに、
もし君だったら次はどんな手を打つ?と訊いたり、
この展開は1976年のイタリア戦役のときの
分断作戦のようだと言ったりする。

総督の手を次々に予測する陛下にいら立った総督は、
分断作戦と言えば、と
ワーテルローの敗戦のことを言い出して、
陛下を挑発。

慌てるモントロン、アルヴィーヌ、アントンマルキ先生。
ここらの3人の「ちょっとあれ何?」的なわちゃわちゃは、
見ていておもしろかったです。
そういうとこもお上手でいらっしゃいました、お三人さん。

総督の挑発はどんどんエスカレートし、
モントロンが総督に近づきかけると辛うじて制すものの、
結局、陛下は立ちあがり、歩き始め、
最後に握っていたチェスの駒を床に叩きつけることに。

直後我に返り、
君の挑発には乗らない。目の前に戦いに専念する。
と静かな声で陛下がいい、
そのあとの駒の動かし方全部を一人で説明。
「チェックメイト」を宣言する。

「おめでとうございます」と言う3人。
そこにぼそっとものすごく小さな声で総督が
「タッチ・アンド・ム―ブ」だと言いだす。
さっき陛下が投げた駒を再び手に取ってからの動かし方が
反則だったと言い張った。
チェスに反則負けのルールはないから
そこからやり直すだけだとアントンマルキ先生が言ったものの、
総督はそれを拒否。
その場を去ろうとすると陛下が声をかけ、
「実戦なら君は負けていた。
実戦に反則負けはないから。
今日の一戦がチェスだったことを、神に感謝したまえ」と、
おそらくは素の声で言った。

「このとき、ナポレオンを心底殺したいと思った」と呟く総督。
"おのれ"の一例ですね。


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