月に舞う桜

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2006年02月02日(木) プレゼント

落款が欲しい欲しいと言っていたら、知人(同級生のお母さん)がデザインしてくれることになった。この方は長年書道をやってらして、絵心もあって、芸術的というかセンスのある方なのだ。
「暇のあるときに、いつでも構いませんので」という感じでお願いしていたところ、何日も経たないうちに大まかなデザインをいくつか(いくつも)描いて持って来てくださった。それが先日のこと。
デザインはどれもこれも一工夫されていて、みんな素敵で捨てがたく、さすが! と唸るものばかり。ずうずうしいことに、本名に加えて「弓月」バージョンも頼んでしまったのだけど、「月」が象形文字になっていたり三日月の枠に平仮名の「ゆ」が入っていたりする。
特に気に入ったデザインをピックアップしたので、今日はサイズの相談と正式な下絵のお願い。そのとき、ご自分で彫ったという落款を見せてもらった。「こうやって角を削ると面白い形になるよ」なんて教えてもらいながら。すごいのは、消しゴムや木じゃなく、石なのだ! しかも、下絵を描かずにいきなり石を彫ったらしい。私がそんなことをしたら、鏡文字にするのを忘れて彫ってしまうに違いない……。
いろいろ面倒なことをお願いしているのはこちらなのに、鎌倉の、手作り小物を売っているお店で買ったというお土産――素敵なしおり――まで頂いてしまった。



木でできているのだけれど、とても薄いので、ちゃんとしなる。そのお土産物屋さんには洒落たちょっとしたものがたくさん置かれていて、それらは全てお店のご主人の手作りなんだそうだ。
彼女は「素敵なものがたくさんあるのよ」と言ってそこの手作り小物を褒めていたけれど、私は、さりげないプレゼントをとても上手に選ぶ彼女を素敵だと思った。素敵なものは、やはりそれにふさわしい人に選ばれるものなのだ。
彼女は興味範囲の広い人で、いろいろなことを知っていたし、いろいろなところに出かけているようだった。母によれば、彼女は歩くのが好きで、少し遠くても電車を使わずに自分の足で行くことを厭わないそうだ。いつも、大きなバッグを背負って、颯爽と。
「江國香織が好きだ」という話をしていたら、「何がお薦め?」と訊かれたので、私がエクニストになるきっかけだった『冷静と情熱のあいだ』を貸した。江國さんの文章や世界を彼女も好きになってくれたら嬉しいなぁ。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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