ピンク色の虫のようなものが僕の目の前を横切った。 僕は驚いて足を止めました。 ところがさらに驚いたことは、ピンク色の虫は突然消えたのである。 あたりを探したがそれらしい、影も形も見当たりません。 どこに行ったのだろうと上の方を見ると、桜の花びらがひらひらと舞っていました。
世話しなく働く人通りの上には、もう気の早い桜の木が花を咲かせていた。
と、いうのは・・・もう三週間以上前の話。
いまでは、すっかり桜の花は散っている。
それにもかかわらず、僕の友達が 「まだ、俺達の桜の花は散っちゃいないぜ。」と意味不明な電話で起こされ 「桜は散ってからが、もっとも美しいんだ。」と訳のわからない口車に乗せられ。 天気が悪く、風も強く、おまけに気温も低いのに、これから花見することになってしまった。
もちろん、桜の花は散っていた。 その代わりに八重桜がついていた。
僕は途中から2時間ほど遅れて駆けつけたので、友達の何人かはすでに酔いつぶれていた。 途中参加だと「駆けつけ三倍」という掛け声があるために お酒をイッキさせられるのだが、既に周りが出来上がっていたため難を逃れた。
周りを見渡すと、僕たちと同じ花見客がちらほらいた。 焼酎ボトル片手に歌っている人。 ビニールシートの上で三点倒立をしている人。 桜の木に抱きついている人。←知り合いのN君。 ビール缶でお手玉を始める人。
この人たちを見てると、 ただただ、外でお酒を飲みながら騒ぎたいだけではないのか、と疑いたくなる。
一応、桜の下にビニールシートを引いているが、誰一人として桜を見ていないから とても桜を愛しているように見えないのだ。といっても桜は散っていたけど。
まぁ〜それは僕たちも似たようなものなのだが。 散ってしまった桜を見ても仕方がない。というのが友達の見解だ。 「んじゃ〜こんな時期に花見なんかするな。」と言ってやったが 「でも、昼間からしかも外で飲むと気持ちいいだろ。」と言われ 「確かにそうだな。」と素直に頷いてしまった。
「これじゃ〜花見じゃなくて枝見だね。」と友達がうまいことを言っている。 目の前に座布団があったら、さぞかし差し上げていただろう。 あるのは、酒だけだったので、そいつを差し上げたが。
それから ガイガイわやわやと舌がもつれ ろれつが回らなくなるほど飲みまくり へべれけに酔うまで、騒ぎ続け 6時間くらいが経過したのち、ようやくお開きとなった。
結局のところ 桜が満開どころか、むしろ枯れていても 盛り上がっている僕らには 夏でも秋でも冬でも「枝見」だけでお酒を飲めるような気がした。 こういう僕らは花見をする資格はないのだろう。
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