柊小説

2006年02月17日(金) シドの回想  ―――1―――

ねえ、前から聞きたかったんだけど、周りから野蛮人って思われてるのってどんな気分?


──別に、どうってことはねえよ。何とも思わねえ。だって自分がそうだって自覚してねえもん。まあ、シンジ抜いたほかの三人はどうだかわかんねえけどな。でも、多分同じだよ


確かにね。シドとシンちゃんは小さい時どんな子だったんだろう、とか考えてもちょっとは想像つくけど、あの三人は全くもって想像できないよね。特にリョーちゃんとヒロトくんなんてオギャーって産まれてきたとも思えないもん。それに、ランドセル背負ってる姿なんて思い浮かぶ?


……リョーキは気持ちわりいけど、ヒロトはまだまだいけるだろ


あーそう考えるとほんと、全然いけるね


それ、あいつ本人の前で言えるか?


……埋められちゃうかも。でも不明だよね、彼は。私は未だに掴めない。まだリョーちゃんの方が喋りやすいし、わかるかも


まあ、嫌でもそのうちわかってくるだろ


そうかな……。ねえ、さっき野蛮人とか言っちゃったけど、どうして周りの子たちはシドたちのことを理解しようとしないのかな?


ん、どういうこと?


みんな五人とは大して話しもしたことないんでしょ?それなのに目を逸らしたり、近づかないようにしたり、軽蔑したり──。私、すごく思うの。五人は普通の中学生よりもいろんなこと考えてるし、遥かに大人だって。確かにそういう目で見られるようなことはいっぱいしてるけど、シドたちから学ぶことって多いし、それって結構大きいことだって思うよ。私はいろいろ教わってるから


風俗街のこととかな


バカ。──多分、セイゴくんも五人の中に入って話したいと思ってるよ。気づいてるんでしょ?みんなあのすごい眼差しには


できれば気づかねえようにしてえよ。でもあの視線はマジで、サジとかシンジ見てキャーキャー言ってる奴らより必要ねえよ


そうなんだ……。でも何で急に違うグループに行っちゃったのかな?


俺たちといるといろんなことに巻き込まれるし、それに喧嘩とかあいつ絶対お断りの奴だったから、つき合いきれなくなって離れていったんだと思うぜ。あいつはシンジの正統派っていうか平和主義とはわけが違うからな。とにかくビビり屋だった。喧嘩に発展するなって時は、いつでも逃げてた


そっか……。でも寂しくなかった?友達が一人減って


そういうのは特になかったけど、そうなってよかったなっていうのは感じた。もしセイゴがずっと俺たちと一緒にいたら、俺たちは確実にあいつを突き放してただろうし。そういう意味じゃ、あいつは自分から離れて正解だったと思う


ふーん


──それよりさ、何でだ?


何が?急に真顔になっちゃって


どうして俺なんだってこと。こういうことは自分から聞くもんじゃないけど……


知りたいんだ?気になるんだ?


知りたい。自分でも考えたけど、性格で選ばれることなんてまずないし、顔ならサジで、性格っていうか優しさならシンジだろ、あと残るものって何もねえじゃん


そうだね。確かにシンちゃんは性格最高だし、顔なら文句なしでサジ。でもね、私はシドにしか持つことのできないもの──それは何なのかわからないけどそれに惹かれたの。個性よりはもっと強力なもの。それは、いくら優しいシンちゃんでも、顔のいいサジにも持つことができないの


ちょっと褒めすぎじゃねえか?


私もそう思った。ねえ、私も


何だ?


私には……ユリナさんにしてたみたいに扱うっていうか、接しないの?


何で、そうしてほしいか?


……わかんない


ユリナの話は──もうするなよ。今考えるといい思い出とは言えない。それに、思い出したくもない


そっか、ごめんね……


──そろそろ、一ヶ月だな


すっごく早いね。それに未だ彼氏って実感がない。まだ片思いしてるみたいだよ


お前もか?実は俺も……つき合ってる感じがしない


失礼ねー、そう思うのは私だけでいいの!──それより、シドって傍で見るとやっぱり大きいね。背、いくつだっけ?


一七七


前に立たれると何も見えなくなっちゃうね。ほら……もう何も見えなくなっちゃった……


──ヒトミ?


煙草臭いぞ


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柊大地 [MAIL]

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