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一人で。 出来れば、二人で。 明日から、華の帰省に便乗して、二泊三日の旅に出る。 華の実家は、谷間の有名な観光地。 微妙な家庭環境にあるせいで、華の家に泊まれるわけではないけれど。 一日目は、一人でビジホ。 二日目は、少し足を伸ばして、二人で温泉。 連泊をするのは初めてのことで、少し楽しみ。 一人の時間があるのも、少し嬉しい。 華を困らせるようなことばかりしてきた、この数日。 理由もなく、気に障り、傷付ける。 傷付けられた華が、戸惑い、逃げることを選んで下がっていく。 あたしはそれを睨み付け、黙ったまま。 ねぇ、華。 あたしたちは、伝わらない感情を、いつもこうやって交わしていたね。 出会ってから今まで、沈黙の中で、何度も見つめ合っていたね。 触れられない距離で、伝わらない体温に、安堵と、焦燥を覚えながら、歩み寄れずに。 いつも後悔するんだ。 もっと伝えていれば良かったって。 それでも、次の日には、あたしに触れてくれるあなたが、愛おしくて堪らないよ。 怯えながら、壊れ物に触るみたいに、目を細めているあなたが。 あなたが好きだよ。 心から思うよ。 それでもあたしたちは、決して交わることのない道を歩いている。 その事実が、あたしの中の、捻くれた弱さを露呈させる。 三流のあらすじだけれど。 それでも、あたしはいいの。
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