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あたしの胸の蝶は羽化寸前。 皮膚が引きつって、飛び立つのを構えているよう。 華の蜘蛛は生まれたて。 柔らかい皮膚の上で震えている。 そんな状態だから、一週間ぶりのお休みなのに、何もできない。何もしない。いくら華に強請っても、何一つくれない。 ねぇ、忘れちゃうよ。 あたし、忘れっぽいんだよ。 全部を愛してくれないと、愛したことすら忘れるよ。 一週間も会わなければ、あなたのことも忘れるよ。 身を捩って、蝶を踊らせ。 視線を捕らえて、引き込もうとする。 それなのに、華は指一本触れない。 出かけよう、と言って支度を始める。 ねぇ、華。こっち見て。お願い、どこか見ないで。華。ねぇ、あたしを忘れないで。忘れさせないで。一人で置いていかないで。愛することを、愛されることを。刻んで。こっち見て。華、お願い。お願い。お願いだから。 あたしのことを、誰よりも欲しがっていてよ。 拗ねたあたしが不貞寝すると、ご機嫌取りのキスが降ってくる。 いつまでも拗ねていると、華が苦笑いをして、ようやくお相手をしてくれる。あたしの蝶を弄びにかかる。 華、あたしは。 ううん、あなたは、本当に、今、しあわせなの? こんなあたしで、いいの? 我が儘で自分勝手で、傲慢なあたし。 そんなものを、貴方の腕は抱きしめてくれるの? それは義務ではなく? こんなことを言ったら、あなたは怒るかな。 それとも、また悲しい顔をするのかな。
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