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今日、華の墨入れに付き合ってきた。 夕方からの予約。 本当ならあたしは仕事なんだけど、拝み倒して変わってもらった。だって、一生に一度しか彫らないんだもん。見ていたい。一番最初に見つめたい、って思って。 行き道では時間があったから、ラーメンを食べて。 それから彫り師さんのところへ。 墨入れはすぐに始まった。華の左肩に、黒い蜘蛛。掌大。 上腕部は、胸よりも痛くないという。 それでも、肩や、柔らかい皮膚へと針が刺さると、華が苦しそうに眉根を寄せる。 それを、ずっと見つめていた。 あたしの時とは体勢が違うから、手は繋げなかったけれど。 きっと繋がせてもらえなかったけれど。 華の左腕から肩にかけて。 張り付いたような、黒い蜘蛛。 あたしの左の胸、心臓より上。 羽根を休める、黒い蝶。 ようやく揃った。 それにしても、華に黒い蜘蛛はよく似合う。 オトコマエ度が4割り増し。 華は不服そうに「ずいぶんと割合がでけぇ…」と呟いていたけれど。 でも、本当に。 本当に華の蜘蛛は綺麗。細い線と、漆黒の体が、たまらなく色気がある。 触れたいのに、触れるのが怖いほど。 どうして、だろう。 その傷痕が、たまらなく愛しいの。 いつもあたしがベッドの上でしがみつく左腕。 いつもあたしが必死で噛み付く左腕。 眩暈が、した。
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