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11時に華の仕事が終わった。 朝の7時からなんて、あたしには無理だ。 途中、仕事場の打ち上げがあって抜けたらしいけど。 寄らなくてもいいと言ったけど、寄ってくれた。 あたしの声が小さくなっていったから。 あたしは。 本当は。 今、仕事場が繁忙期で、他のお店に手伝いに行ってて。 嫌いな人がいるわけじゃないし。 嫌なことがあるわけじゃないのに。 ただ馴染みのない空気に耐えられなくて。 オンナノコの日の情緒不安定も手伝って、ちょっと泣きそうになった。 情けない、あたし。 まだ引き摺ってるの、人が怖いという、意味のない強迫観念。 キモチワルイ。 頭が痛い。 何かを握り潰したくなるけど、握り潰すのは自分の内側しかない。 むやみに笑って誤魔化していると、息が苦しくなる。 泣く、と思った。 目頭が熱くなった。 でも、あなたが。 あなたの手が、あたしの頬を包んで、上を向かせてくれた。 それだけのこと。 涙は、出なかった。 もう少し頑張ろう。 あたしよりもきっと、華の方が大変なんだ。 でも、息が、できなくなる。 苦しい。 早く、呼吸のできるところへ、いかなくちゃ。 でも、華のいない部屋。 一人の部屋。 酸素はあるのに、苦しいままだ。
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