あなたに綺麗な傷をあげる
生涯、忘れられないように


死に弱い、いきもの。
2008年02月26日(火)

祖父が今日、突然の発作で亡くなって、
明日の夜に、新幹線で実家に帰る。
記憶の隅にある祖父の顔。
高校生の頃までは、よく見かけていた顔。


あたしは、死に、弱い。
強いひとなんて誰もいないだろうけれど。
誰だって弱いだろうけれど。

言葉を換えてみるのならば、あたしは、死の匂いに弱い。



怖くて怖くて、仕方がない。
死に逝くひと。見送るひと。嘆くひと。
泣くまいとして、故人の面影を語り、笑いさざめく空気。
その、匂い。



あたしは、震えるのを堪えるしか、出来ない。
それが荘厳であるから、とか。
それが悲しみであるから、とか。
そう言うものではなく、きっと、未知への恐怖。

自分ではない、何かに変わるのだという、
天災にも似た、その劇的な瞬間。

誰もが、その一瞬を飲み込んで、
ゆっくり、ゆっくりと咀嚼していくのだろうけれど、
あたしは怖くて、飲み込めずにいる。




ただ思うのは、
祖父がやり残したことは無いのだろうかという、問いかけ。
例えば、明日はコレが食べたいとか。
来週にはあれをしよう、とか。
そう言ったものが永遠に失われてしまった、悲しみ。


あたしは明日の夜に帰省する。
何か、あたしの中でも、劇的に変わるものはあるのだろうか。
しめやかな色彩の中で見送る、祖父の姿に、
あたしは何を感じるのだろうか。






少なくとも今、あたしは、いつか訪れる自分の最期に、
震えるほどの恐怖を感じている。



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